将棋電王戦FINAL、第2局

今回は永瀬六段(プロ棋士側)を応援していた。将棋は努力で決まる、才能は要らないと言っていて、明らかに才能の塊みたいな人だった。プロ棋士の、というより、永瀬の力を電王戦で見たかった。
Seleneは、各定跡手を等確率で選ぶ(変な手を選びやすい)。今回も力戦型になった。コンピュータが力を出せる展開で、千日手も含みとして存在している。互角っぽい序盤になった(コンピュータ側が特に悪くならなかった)ことでとりあえず安心した。永瀬応援といっても、Seleneが力を出せずに終わってしまうのはもちろん嫌だった。
序盤、手はそれなりに進んでいくが、戦いが起こらない。ここは退屈な時間だった。そして49手目、Seleneが仕掛けを見つける。コンピュータの評価値はやや先手に振れていた。これは後手(永瀬六段)が厳しいのではないかと思った。何とかそこを覆してほしいとも思っていた。
今回、プロ棋士側を応援する気持ちで見ることができたのは、Seleneの腕力への信頼が自分の中にあったからだと思う。その上で、コンピュータに対したときの永瀬六段の実力が未知数だった。ファンだから強さを見せてほしかった。1局で何かわかると思ってはいけないけど。
千日手も少しは期待していたけど、Seleneがやや有利と自分で思う形だったようで、永瀬六段もその可能性は低いと思っていた。そもそも、進行が遅く16時以前の千日手は望めそうになかった。観ている側は、16時前の千日手で指し直しを期待する。しかし、永瀬はそんなことと関係なく16時以降も勝ち数の期待値を最大化すべく千日手(16時以降は引き分け)を選択肢としていただろう。
そして終盤。コンピュータの評価値はSeleneよしに傾きつつあるように見えた。しかし、危ないと言われていた順にSeleneが踏み込む。「終盤ワンチャンあるんじゃないか?」という雰囲気があった。結果的には、今のコンピュータ将棋一般が苦手とする局面だった(ソフトによって違う)。ここで永瀬は△27同角不成。
Seleneには、相手が指した飛角歩の不成を認識できないバグがあり、Seleneの王手放置で永瀬六段の勝ちとなった。このバグの存在を知ったうえで、勝ちになった局面で角不成を敢行するというのは、猛烈にかっこいい。対局の後には、終局図からの深い読みを披露して視聴者を感動させた。解説のA級棋士よりずっと深く正確に読んでいるようだったが、これは対局者と解説者の差だろう。
立会人の三浦九段が、局面が永瀬勝ちだったことを早い段階で力説していたのは気になった。ルール上Seleneの負けは明らかなのに、これではまるで、局面の優劣が勝敗に影響するかのようではないか。「バグでプロが勝っては申し訳ない」みたいな感情があるのだろうか。あるいはファン心理に配慮したとか。いずれにしても、そういう心情(をここで表に出すの)は理解できない。4手目に角不成したとか、プロ棋士敗勢の局面で歩不成したとか、そういうケースでも今回と同一の判定ができたのかどうか、不安になる。
終盤、コンピュータにとっての課題局面を提示してくれてよかった。また、永瀬六段の勝ち方は、まさに「鬼」だった。最後のほうは、コンピュータの評価値通り先手がいいと思っていたので、申し訳ない気持ちになった。