詰将棋の「玉方最長」について

詰将棋で、攻方は詰む手を選びさえすればよい。*1
しかし、当然ながら玉方は最善の逃げ方をしてくる。
同じ詰むにしても、最長手数で詰むように逃げるのだ。
ここで、最長手数とは何か?
攻方がどんな手で来ても、この手数までなら耐えられるという手数だ。
これが、「攻方も手数が延びるように協力してくれたときの手数」であるわけがない。
本将棋をそれなりに知っている人なら、「自分が最も駒得する手」を探すときに
相手がこちらの駒得に協力してくれた場合のことは読まないはずだ。
つまり、「玉方最長」は「攻方最短」を内包している。
詰将棋に「攻方最短」などというルールはないのに、
「玉方最長」の説明のためだけに「攻方最短」をルールとして付記するのは馬鹿げている。
もっと言えば、最長の説明としての「攻方最短」も個人的には気に入らない。
ε-δ論法の「∀ε > 0」は、「任意の正の数εに対して」という意味であって、
「どんなに小さな正の数εに対しても」というのは意訳だ。
「玉方最長」にとって「攻方最短」よりも都合の悪いケースがないことを
確認する必要があるという意味で、「攻方最短」という説明は劣っている。
代わりに、(もし説明するなら)「攻方がどんな手で来ても」という説明にするべきだ。
どっちにしろ、「玉方最長」に補足説明をする必要はないと思う。
迂回手順はルールだから書かなければならないが、
その場合も迂回手順の説明をするだけでよく、
不用意に「最短」という単語を使うと誤解を招くだろう。
ちゃんとした詰将棋(完全作、すなわち余詰めがない)であれば、
攻方にとっての正解手は唯一であり、正解以外の手は全て不詰めになる。

*1:ただし、迂回手順(1手で詰むのに、より長手数で詰ます順)を選ぶと不正解になる