ガルリ・カスパロフ vs 羽生善治

期待以上に楽しめた。まず、2人の対局する姿を見ているだけで飽きない。
解説の塩見、アービター(途中から解説も)の小島、通訳の南條と、ここに爆弾落とされたら羽生も含めて日本のチェス界が大変なことになるような顔ぶれだ。
解説の二人が素晴らしい。初心者向けの丁寧な説明と、チェス用語を使った少し突っ込む解説のバランスがいい。この2日間は、今日のために初めて本気でチェスをやったが、ちゃんと準備しておいて本当によかった。
ポーンはナナメにつながるのがいい形というのはコンピュータとの実戦の中で体感していた。人間が強いのは駒が少ない局面というのも、(あまりにも低レベルな)実感とも合っているし、コンピュータ将棋の経験からも納得できる(コンピュータが強いのはゴチャゴチャした局面)。終盤は将棋と感覚が最も違うところで、キングが戦力になったりする。今まで全然知らなかったけど、チェスの終盤は面白いよ。
カスパロフの現在についてはよく知らなかったが、周到な準備と圧倒的な強さを感じ、やはりこれは天才が本気でチェスに臨んでいるんだと思った。
観戦していてだんだんわかってきたが、これは安心して羽生を応援できる手合いなのだ。相手は強い。カスパロフとそこそこ戦えるという時点で化け物だ。
さて、羽生が白番で千日手模様。引き分けはいいけど、ここでの千日手は少し物足りないかなあ、とか思っていたら、カスパロフが打開!そのときの表情がまたいい。魅せるなあ。解説を聞いて何となくの意味はわかったものの、時間の関係でちょうどこの部分の大盤感想戦がされなかったのは残念だ。
レーティングからすると、将棋でアマトップと羽生がやるようなものなので、2連敗は予想された結果。しかし、羽生なら何かやってくれるのではという思いもあったので、実際の結果と内容を見て少しは正しい認識に近づけたかなと。チェスの知識ゼロだったからな。
あんまり面白くて、普通なら是非聞きたいと思う電王戦関係のインタビューが蛇足に思えてしまうくらいだった。そのインタビューの中では、羽生の将棋界への憂いが感じられた。ただ、コンピュータ将棋を悪く思っているわけではないと思う。何事にもいい面と悪い面があるというだけで。