王位戦、竜王戦、途中〜終局

王位戦第1局の2日目は、午前9時に始まった。
封じ手は、激しい流れになる△65桂。これに対し、広瀬は角を切る。
竜王戦は10時開始。1組3位の羽生と、2組優勝の藤井が相対する。
今年度は共に好調であり、決勝トーナメントの中でも屈指の好カードだ。
振り駒と最初の数手でこんなにドキドキするとは思わなかった。
藤井先生が先手になったときは正直かなり嬉しかった。
「勝つ」ということが、確かに存在する希望として見えてきた。
そして3手目▲68飛!
王位戦では、広瀬が▲53銀という、素人目にもありえないような歩頭の銀打ち。
広瀬の指し手には、「さすが広瀬」も多いが、「はあ?何それ」もある。
後手が放置しても▲42銀成しかないのでは△42同金上の味がよすぎる。
しかし、指し手が進んでみると、後手51の金が53へ移動、この2マスの違いはとてつもない。
真面目に正しく手を読む深浦が相手だからこそ、広瀬のセンスの異常性が際立つ。
竜王戦、藤井は2手損の角交換向かい飛車を選択。
これは打開が難しい戦型。先手番でそれを選んだ理由は何だろうか?
ともかく、観戦している側はテンションが下がる。
ノーマル振り飛車や矢倉で将棋を有利に進める、あの荒々しさが見られない。
相手は羽生だ。勝てる気がしない。
14時49分、藤井は▲86歩と仕掛ける。その瞬間、長考した羽生は△79角と打ち込む!
△同歩▲同飛くらいでも先手どうするのかと思っていたが、えげつない。
「(他の手でも困ってるだろうけど)こんな手順でもそっちは勝てないよ」と言われた気がした。
竜を自陣に引かれ、桂頭の傷も残っている。
これで後手が羽生、先手が藤井!?何も考えられない。
自分じゃ先手を持って勝てる気がしないし、羽生なら後手を持って勝ち切れそうだ。
王位戦は、いつの間にか広瀬がはっきり好調の流れになっている。
後手は5筋で金を吊り上げられ、3筋に桂馬を打ち込まれるという惨状。
どんな悪行をはたらけば穴熊の堅さにこれほどの差ができるのか。
広瀬が指した筋の悪そうな手も、後になって見ればピッタリの好手。
「相穴熊は面白くない」などというイメージからはかけ離れた将棋だ。
駒がゴチャゴチャはしてないので視力が悪くても局面は見えるし、
単純で、無限の広がりがあり、その中から好手順が選ばれて、進んでいく。
これができる深浦広瀬は、エンターティナーとしても一流だ。
これが将棋。将棋を知ってる人しか楽しめないなんてもったいなさすぎる。
竜王戦。まだ64手だが、当然のように藤井が投了していた。
戦型が決まった時点でこういう可能性も考えてはいた。しかしそれが現実になるかね。
3年以上ぶりの勝利を想像して、胸の奥の小さいけどギラギラ輝く希望が我慢できなかった。
ああ、その灯は消えてしまった。消えてしまった。
棋譜コメントには「驚いたことに」「誰が予想できただろうか」などとあるが、
心底意外に思った人はいなかっただろう。
王位戦は、深浦の早逃げに対し、広瀬が決めに行った。
▲44桂の詰めろに、深浦が形作りをして投了。
広瀬はタイトル戦初勝利を挙げた。
初めての舞台のはずだが、棋譜を見る限り普段通りの様子だった。
第2局では、広瀬の後手番での戦い、今回の対局を受けての深浦の対策が注目される。
王位戦中継Blog: 第51期王位戦七番勝負第1局
2010年7月14日 第23期竜王戦決勝トーナメント