NHK杯、森内・藤井

藤井が後手。角交換四間が予想されるところ、森内は▲25歩を決めた!居飛車党相手には、先手だけ歩を突いた角換わり模様になり、損な手だ。振り飛車党相手には、ゴキゲン中飛車と角交換四間を封じる意味がある(向かい飛車の権利を与えるデメリットもある)。
藤井はそれでも四間に振った。角道を開けたまま、▲56歩を待って△22角成!これは、通常の角交換四間と比べても▲33角を上がったぶん手損している。▲22同銀とさせられなかったのも損だ。だが、▲56歩と▲25歩はいつも突いてもらえるとは限らない手だし、手損というのは自分の手を後出しできる意味もある。
2筋逆襲で藤井がペースを握ったかに見えたが、森内が次々に手を見つけ出す。「そんな手があるのか」という感じの凌ぎをその場で繰り出してくるのがさすが。
まず、やりにくいと言われた▲37桂で受ける。藤井も△35歩と全力で咎めに行く。そこでいきなり▲45桂と跳ね、▲44角△同歩▲53桂成△同金▲23歩△同飛▲34角と浮き駒を咎める手を見せた。そこで藤井は△25歩で銀を楽にして、角交換から△44歩で桂を取りに行く。森内は両方の桂で53の地点を狙うが、藤井は受けずに金をかわした。
今回は持ち時間の消費が早く、即指しも多い。つまり編集が入っている。それ自体は珍しくないが、音声が不自然なところもあった。終盤が長手数になるのかなあ、しかし藤井がそんなに長時間の終盤を持ちこたえられるのかなあとか思っていたら、なんと千日手!指し直しは、考慮時間が双方5分以上となるような足される。藤井の考慮時間が9分(森内は5分)あるのが大きいと思った。
解説の深浦は、藤井について「現在の升田先生と言ってもいいくらいの」「天才ですよね」「戦術的な天才と称されるのは藤井さんぐらい」と絶賛していた。