小さい頃、「3倍のルーペ」と聞いて、
普通の虫めがねでは1.5倍にもなってない感じなのに、3倍なんてすごい!
とワクワクしてルーペを覗いた。
しかし、虫めがねよりはずっと大きくなるものの、3倍にはならずにガッカリした。
中学校で、レンズについて勉強した。
すると、一般に倍率と呼ばれるものは、25cmの距離で物を見る前提で計算されていた。
ルーペを使うのは、多少目が疲れても物の細部まで見たいときだと思っていたので、
この25cmという距離はもっと短くすべきだと憤慨した。
そういえば、「あんな倍率の低い虫めがねで、新聞を読む助けになるのだろうか?」と
思ったこともあった(老眼のため、裸眼では新聞が読めないとき)。
この場合は、
「ピントが合う位置まで新聞を遠ざけると小さくて読みづらい」
という点で困っているので、低倍率の虫めがねでも役に立つ。
上で出てきた25cmという距離がここでは更に長くなるので、実効倍率が上がるのだ。
つまり、小学生の自分にとっての倍率と、おじいちゃんにとっての倍率は違っていたのである!
倍率とは、「自分が」何倍物を細かく見られるかだと思っていた。
しかし、それは人によって違う。
また、「細かく見るため」だけでなく「楽に見るため」にも虫めがねは使われる。
定量的なこと
これまで使ってきた25cmという距離は明視距離と呼ばれるもの。
これをとし、レンズの倍率を、焦点距離をとする。
せっかくの大きな虚像も、遠くで見てはしょうがないので、レンズは目にくっつけるものとする。
このとき、次の関係が成り立つ。
つまり、レンズの倍率が示されていれば焦点距離がわかる。
は25cmという定数であることに注意。
また、焦点距離を求めてから、を自分の見える距離に置き換えれば、
「自分にとっての倍率」も計算できる。
例えば、新聞から32cm離れないとピントが合わない人にとって3倍のレンズも、
目から8cm離れたものにピントを合わせる人が使えば1.5倍になる。
分解能
ずっと、レンズを目にくっつけると全く拡大されない(使っても意味がない)気がしていたが、
この場合は、物に近づくことができるという意味がある。
裸眼ではボヤけてしまって近づけない距離に行けるので、いつもより大きく見えるのだ。
とにかく細かいものが見たい!というのであれば、問題になるのは倍率ではなく分解能だ。
ここでは、ピントが合っているときの目の性能(視野角、解像度)が常に同じと仮定する。
すると、物までの距離をとして、が「細かいものの見えやすさ」の指標と言える(分解能の逆数に相当)。
が小さいほどいいのだが、近づきすぎるとボヤけて見えなくなる。
さて、距離で物を見ているときに、焦点距離のレンズを使うとどうなるか。
(自分にとっての)倍率は、 なので、
「見えやすさ」は、 から にアップする。
このとき、物までの実際の距離はより短くなっていることに注意(虚像までの距離が)。
すなわち、レンズの効果は、「見えやすさ」にが加算されるということになる。
元々の小さな人(老眼の人)はが足されるインパクトが大きいことがわかる。