サマーウォーズ(この前の金曜ロードショー)

自分が細田守を知ったのは、おジャ魔女どれみ
「どれみと魔女をやめた魔女」あの話はよかった。
しかし、あとで細田守デジモンの映画を見たときは、
デジモンを知らなかったこともあってあまり面白さがわからなかった。
押井守イノセンスが肌に合わず、細田守デジモンといい、
やはりコンピュータ関係のこういう映画はダメなのかなあ、などと思っていた。
なので、サマーウォーズも、何がなんでもネタバレなしに見たいという風には思っておらず、
サマーウォーズ:曜日の求め方とか2056桁の暗号とかの解説 - A Successful Failureも読んであった。
健二が手錠かけられる辺りまでは、それなりに質の高い描写が淡々と続く感じ。
2056桁の暗号を解く話はクライマックスだと思っていたので、この早さは意外だった。
ただ、大体予想通りの流れ・空気で進んでいく。
しかしここから盛り上がる。作品に対する見方が変わった。
暗号を解いたのは55人もいて、PCの性能が戦闘能力に直結してて、
スーパーコンピュータに氷、残り1分で軌道修正。
それらは全て表現手段であり、ほんとに使い方がうまい。
これだけ科学的にめちゃくちゃなのに面白かった。
流れからして、健二は純粋に2056桁の因数分解ができる人なのだと思う。
それは、どんな頭の作りをしていても、物理的に不可能と言っていいレベルのことだ。
でも、そんなことができる人が世界中で55人もいるという、
頭のネジが吹っ飛んだような設定でどうでもよくなってしまう。
それ以降に解いていたのは516桁の暗号らしいのだが、そのことからも、
「2056桁は516桁の4倍くらい難しい」程度の認識で作っていることがうかがえる。
それが間違いであることは、監督もさすがに知っていると思うが、
この作品内では、あくまでもユルい認識を貫いている。
更に、健二が最後の文字を間違っていたという描写によって、
ちょっと抜けた性格をアピールして萌えポイントを稼ぎ、
数学オリンピックに出られなかったのも単純ミスのせいかと思わせている。
この流れで、細田作品のコンピュータ関係の描写に対する偏見が解けた気がした。
冷却に氷を使うアイデアはあるとしても、フスマを閉めきるセンスはありえない。
四の五の言わず風や冷水を送り込むべきだ。
ただこれも、氷を持ち出されて熱暴走という構成上の都合。
「正しさ」はどうでもいい。映画の本分は、「伝わる」ことだ。
PCの性能が戦闘力に直結する設定も、普通じゃ出てこない発想。
これをまとめ上げて一つの細田作品が成立しているというのだから、
この映画を作った人のセンスは異常と言う他ない。
あの人数の家族は萌える。大家族の中に小さなクラスタができているのもいい。
葬式の心配ばかりする女ども、そして男どもはなぜ物を壊すw
夏希先輩は、「ドラえもん」のしずかちゃんに匹敵するヒロインオーラがある。
さいご健二がぶっ倒れるのも当然と思えるくらいの。
健二の数字を書くスピードは素直に羨ましいと思った。
2056桁の因数分解は、偶然や天才でどうにかなるものではない。
多くの観客があるわけで、少しでも誤解を残す可能性があれば嫌だと思うのが普通。
でも、そういう嫌さがある作品なのに面白かったし、嫌さも比較的小さかった。
途中から急激に面白くなる・ヤバくなってくる感覚は、
そういえば「時をかける少女」のときと似ている。
おジャ魔女だけかと思ってたけど細田守、けっこういい仕事ができるんじゃん。
これからもほのぼの良作が期待できるなーと思った。