NHK杯、久保西川戦

対局前のインタビューで西川四段が、当然相振り飛車になるような言い方だったので、
そういうもんなのかと思ったが、やはり先手の久保二冠は居飛車を選択。
先手は特に矢倉を警戒する様子もなく、当然のように後手の中飛車となった。
先手は、金を締まって飛車を浮いてから、▲98香。そこで△22飛と仕掛けを見せる。
ここからのやり取りが、真似できないけど憧れる、まさに対抗型という順。
△68角成〜△78馬の筋があるため、▲88銀と上がりづらい。
そこで△95歩を入れてから△24歩。先手も▲16歩としたたかに待つ。
後手は△85桂と打つ桂が欲しいわけで、ここで▲17桂と活用する。
△14歩▲88銀の交換を入れて、このタイミングで△25歩と取り込んだ。
▲同飛△24角に、▲46歩は手筋の受け。
しかし△33桂〜△15歩が決まって先手苦しいかという局面。
久保二冠は、△15歩を素直に▲同歩と取り、△16歩にも▲86歩でジッと桂打ちを消す。
何かやれよと言われて△15香と厳しく攻めるが、実に嫌らしく▲13歩が飛んでくる。
これには△28歩▲同飛と近づけてから△17歩成で桂を取るが、おかげで歩切れ、
変な手だが、得した桂馬で△25桂打と遮断。
△13角と嫌な歩を取り、△56歩と垂らしたら、いよいよ飛車をさばいて勝負。
この間、先手は▲86歩〜▲87銀、▲55歩〜▲56歩、少しでも貯金をして攻めさせた。
後手は駒の損得なしに二枚飛車を実現。△33桂は残っているが、▲77角も酷い。
▲29歩で香車を取らせて手を稼ぎ、▲23角〜▲34角成。
△18竜に▲19歩は歩を消費するだけで悔しいので▲78金右。
後手は△58飛成からと金を作りにいくのだが、そこは▲57同銀とあっさり精算。
代わりに、後手が飛車を成り込んだときに捨てた桂馬を拠点へ打ち込んで、
更に33で拾った桂馬で後手の守りの金を責める。
この辺り、いかに相手に動いてもらうかという勝負になっている。
つまり、動いてもらわないと反撃ができないので、仕方なく相手を焦らせているのだ。
△53竜と馬取りに引き付けた局面は一瞬後手も堅そうに見えるが、
▲15馬と香車を取った手が意外と悪くない。
先手は既に完璧な銀冠穴熊となっているため、竜を自陣に置いたままでは攻めが行かない。
△65桂は入って、二枚飛車と77への打ち込みがとてつもなく厳しい攻めになるのだが、
先手にとって、もはやそれを防ぐコストがそれほど高くない。
△16とや△51歩は、「もしよければ勝たせてもらえませんか」と聞こえる弱そうな手。
▲69金と▲59香がほとんどタダで入ってしまい、更に馬も切って攻めが速い!
後手の美濃囲いは、手が付き始めるとどんどん崩れていく。
もっと悪いことには、先手の穴熊を何度も堅くさせた対価を後手はほとんど得ていない。
あとは持ち駒が歩しかない先手の攻めが切れるかどうかだが、
52の地点に桂香が利いており、△34歩をかわして▲51馬と行けるようでは後手がきつい。
後手も△84歩や△58歩〜△59歩成、△77桂成〜△83角成などの粘りを見せるが、
先手玉は、歩成で冠の銀を奪っても王手にすらならない堅陣。最後は大差だった。
先手も、何で▲84歩の取り込みを入れるのかと思ったら、▲84金の打ち込み!
解説の、本筋の手を喜ぶ阿部八段もよかったんだけどね。
久保二冠の中終盤がすごすぎた。