(前回は森内・松尾戦だったが)これまた好カード。年齢が離れた実力者同士の戦い。
戦型は横歩取り。高橋は後手なら横歩だろうし、中村もそれを拒否する理由がない。なるほど必然の横歩取りだ。あまり深く知らない戦型なので、観戦していて面白くないという面はある。
ただ、△54飛から直接先手玉を狙う形になったので、ある程度は楽しめた。左右の桂を跳ねて玉頭を攻めるのが理想形で、理想形がわかっていれば考えようがある。考えてもわからないけど、そうなると実戦の進行や解説が楽しみになる。
中村は強気な手が目立つ。▲37銀は、次に▲46銀となればいい形だが、瞬間的に玉頭が薄くなる。つまり「攻めてこい、受け止めてやる」と言っている。怯まず正確な指し手を続けて小気味よい。
高橋は、△84飛と戻して攻めを諦めたかのように見えるが、結果的に先手から角交換をさせることに成功している。終盤も、取ってほしい飛車を馬で取らせることに最後は成功した。鋭さは感じないが、盤面をジワリ支配している。
ジッと△44歩を突いて桂跳ねの足場を作ったところや、速い手が欲しいところでやはりジッと△26歩とした手は、憧れてしまう。
「自分からは崩れない」「将棋やってて一番楽なのは相手が自爆してくれること」
そして終盤が面白い。後手からの詰めろに対して、角取りを放置して△75歩と逃げ道を作るが、飛車の横利きを消して▲44桂の詰めろになっている。つまり、詰めろ逃れの詰めろだ。そこで後手は、△72歩で馬を遮り詰めろを消す。ここで▲同馬と再び詰めろにすると、馬がいなくなったことで△84銀が生じて先手玉が詰んでしまう。
△67銀と、玉の下から銀を打ったのがまたすごい。腹銀を下から打ったような包み方。腹銀と違って▲68桂という受けはあるが、桂を使わせたことで▲44桂がなくなった。そして必殺の△93角。逃げ道を塞いで、さっきの桂を竜で食いちぎったところで先手投了。