けいおん!!(8/17)

今を捨てるための演出。
ライブが終わったあと夕方の部室。唯たちは、演奏中のことをよく覚えてないと言っていた。
覚えてなくても、夕方の部室に今がある。
今は何のためにあるのかというと、1つ先の未来のためにある。
演奏開始時の唯たち一人ひとりは、開始5分の一人ひとりのために存在している。
ドミノ倒しのように次の一瞬へもたれかかり続け、それぞれの時間は回っていく。
もう次々に今を捨てて今を作っていく人生そのものの演出。
正直、唯が2年生時のライブがいちばん興奮した。自分が主役になるヤバさがあった。
学園祭というのは、自分という「オンリーワン」が、その通りに輝ける唯一の場所。
その感覚を、ギー太を背負って走る唯が体現していた(1期最終回)。
それに対し、今回のライブは、クラス中、学校中をも巻き込んだ異常な盛り上がり。
それはそれでいいのだが、でもこれは一種の「ナンバーワン」*1だ。
あの立場には選ばれた人しかなれないと思うと、いまいち感情移入できない。
それでも!
それでもその最後のライブを描いて、それをその場で消費してあの涙を見せるのなら、
何の問題もない。
アニメを見たあとに「30分」ではなく「今」しか残らないという恐ろしい作品。
梓は落ち着いていたけど、あれが普通の反応。
3年生と見た目を比較すれば冷静そうにも見えるけど、心の中はそうじゃない。
静かな顔で、充実感と寂しさが混じった、しみじみいい気持ちでいるのだ。
それにしても、ライブをやっているときの、体育館の外の描写は、
毎度毎度、何であんなにいいんだろう。
前回も出てきたような絵をただ置いてるだけなのに、何かもうすごくいい。

*1:本当は「ひだまりスケッチ」のような、尖った天才タイプの主人公が好きなのだが、ちょっと器用な普通の人の日常を描く「けいおん」の場合、視聴者の自分がいつもと違ってナンバーワンよりオンリーワンを求めてしまうという不思議