竜王戦第3局

羽生はここで少しひねって、横歩取り以外の将棋を出してくるかとも思ったが、
やはり普通に横歩取り。予想された戦型だ。
序盤、毎度渡辺の落ち着きぶりはさすが。
封じ手は切り込むような手を予想していたが、
渡辺が封じたのは屈服するような▲88歩。
ところが、これで後手はなかなか手がない。
先手は一貫して切らす方針。
後手玉は金銀が密集しているものの、壁で狭く攻め手にも乏しい。
この辺、渡辺の指し手が珍しくBonanzaと一致しない。
切らす、壁、速度、というような勝負なので、Bonanzaは苦手だろう。
渡辺は受け続けてこれでもかの▲78銀!
受けの方針は一貫しているが、△75金でついに一歩を与えてしまう。
その後の▲35桂や▲45角の迫力が酷く減ぜられ、▲25歩も元気が出てない。
そして、この将棋で二度と動くことがなかった▲24歩を着手。
いや考えてみればここまで今期竜王戦で羽生に2回も勝っているわけで、
たとえ傍目に快勝でも、勝つためにはどれだけ忍耐の指し手が必要だったか。
元々将棋は難しいのに、この疲れているときに正解を指せるほうがおかしい。
羽生の強さというのは、この辺りにあるような気がする。
▲16角はなかなかの手だと思ったが、ここは既に後手がいい。
138手目△58銀で先手の渡辺が投了。
以下はこれでもかという並べ詰み。66の馬がきれいにスルーされている。
これで渡辺から見た勝敗は、2勝1敗。
羽生は次局の先手番を取れば、改めて三番勝負に持ち込める。
そう考えると次の1勝は大きいし、今日の1勝もすげえ大きい。
もちろん、何戦目かで1勝の重みに違いがあるわけないので、
第1局の重みもこのくらいあったということだ。
途中、渡辺が1分将棋に入ったとき、棋譜中継で持ち時間がゼロと表示されていた。
正しくは残り時間1分。ゼロになったら即負けだよ。