NHK杯、稲葉・丸山

稲葉がNHK杯本戦初出場とは驚きだ。丸山が後手になったので、戦型は一手損角換わりだろう。
竜王戦と似た形になった。うーん、やはり後手は玉が薄いなあ。後手32玉型では、コビンが開いているし、34の地点の傷も痛い。先手の歩が35まで伸びているのは大きい。▲26飛と浮いたときに、飛車の利きが横に気持ちよく通る。
稲葉は馬を作らせて指す。後手は馬を引き付けて、かなり安心感のある形になった。ここで、後手の仕掛けから一気に激しい変化へ。2人ともけっこう突っ張る。飛車を切って後手が攻め続る。ここで△88歩が、入るものなんだなあ。そして▲76銀!
これは自分が後手を持っていたら相当困るだろうなあという感じの手だ。とか思っていたら丸山も考える。6分残っていた考慮時間を、丸山はここで使い切ってしまった。そして、ひねり出したような△25馬。かなり危険に見えるが、▲28飛と引かせて攻めが続いた。
△67桂成から、87の歩が浮いたので△88金と打つ。もったいないようだが、ここを押さえて△47馬が厳しい。王手飛車がかかった。先手は、王手飛車をかけて飛車を取る2手を使い、玉を上部へ逃がす。あとは入れるかどうかの勝負だ。
▲15桂。これは詰めろではない。なので受けずに△55馬。これは詰めろ。▲23角と王手。△22玉。これは、先手玉が詰めろだから▲41角成とかされてもいいという手。ここで▲61飛。これは詰めろ逃れの詰めろ。ここから、わけのわからない領域に突入する。
既に、生身の人間が1手30秒で指せる局面ではない。しかし、30秒未満で指さなければ時間切れで即負け。嫌でも手は進む。べちゃべちゃと肉がぶつかり合う戦い。観戦しているほうとしては、駒がどっちの駒だかわかんなくなる。近距離で玉を攻めてる駒が成れないというのは異世界だよなあ。
最後のほうの▲32玉。41から32に、玉を下へ動かす手だが、入玉の将棋で上部脱出のような感じで玉を下に動かしたのが面白かった。この玉にとっては、今は盤の右上が「上部」なんだなあ、みたいな。△16馬と切った手に対し、ジッと▲同歩と取ったのもすごかった。