NHK杯、糸谷・船江

NHK杯放送中、船江五段本人のツイート - Togetter
西遊棋のアカウントでツイートされていたので、まとめました。
先手の糸谷は、矢倉にしないので▲26歩。船江は(相掛かりか角換りを)受けて立つ△84歩。3手目▲76歩で角換わり模様。△32金に、△85歩を待たないで▲77角!
将棋には色々な手があるものだと思った。通常の角換わりと比べると、後手84歩型である点と先手が金を上がっていない点が異なる。一手損角換わりとも違うし、先手番一手損角換わりとも違う。
糸谷は、▲17香〜▲18飛として露骨に端を狙う。その後、保留していた▲78金を指す。これは本当に難しいけど、この形になったことで金保留は役目を果たしたということなのだろう。一応、5手目▲77角は、横歩取りや一手損角換わりを避けた意味があるので、主な意味はそこにあるとも考えられるが、横歩やりたけりゃ普通は2手目△34歩でいいからねぇ。
船江は△62金としてから△65歩と攻める。糸谷はこれを取らずに▲67金右!これには△14歩▲同香△同香▲15歩(▲14同飛は△13香で飛車が死ぬ)の瞬間に△66歩▲同銀△65歩▲77銀△66香という後手からの反撃がある。糸谷の対策は、△14歩に▲25桂。桂香を渡して銀を入手すれば、▲71銀の割り打ちがある。
▲35歩は桂頭攻めだが、△16歩〜△17歩成が大きい。と思ったら▲47銀〜▲58飛も気持ちがいい。どちらの攻めが速いのか、この難しい局面をプロが実演してくれるのだから、NHK杯は面白い。
▲34歩と桂取りに取り込んだ場面がまた面白い。この場面は、先手から▲55歩△43銀の交換を入れており、▲34歩に△同銀と取る権利を先手が与えている。よって、これを△同銀とは取れない。少なくとも相手を信用すれば取れないし、取るとすれば相手の言い分を面と向かって否定するだけの自信が必要だ。
ていうか船江の狙いは▲34歩△37と▲56銀△45桂(取られそうだった桂を捨てる)▲同歩△24角だった。これは、実に嫌な角だ。
ここから、非常に難しいねじり合い。ただ、△47香なんかは後手がかなり辛(つら)そうに見える手。やがて後手玉が危険な状態になった。▲63角の王手飛車をかける前に▲34歩△同金で逃げ道を封鎖しておくのが、逃してはならない利かし。
先手に勝ちがありそうな局面、糸谷はなかなか寄せを見つけられない。考慮時間を使い切った。時間に追われて指す場面もあった。そんな中、船江がついに逆転する。馬を取らせて温存した桂を△92桂と打ち、先手玉に必死をかけた!そこからの糸谷も、どう見ても詰まなそうな後手玉に、すごい手順で食いついて、最後まで見応えがあった。