棋譜の表記方法:日本将棋連盟
「▲52銀右上成」などの表記を、連盟の公式見解を元に完璧に理解しようと思ったが、
厳密性に欠ける部分があってわかりにくかったので、自分なりの解釈をまとめた。
具体例に関しては、上のリンク先が気になるパターンを網羅していてわかりやすい。
以下の方法は、(バグがなければ)正しい表記を生成するが、意味が間違っている可能性はある。
(追記)先手の角が53と55にあって、55の角を44へ移動させた場合、
53からの移動なら成か不成が表記されるはずだから55からの移動だろうと、推測はできるが、
▲44角の表記そのものには、▲44角引不成という手を排除する情報は含まれていない。
そればかりか、▲44角は▲44角引成とすら矛盾しない。
よって、ここで▲44角や▲44角不成という表記は明確に誤りである。
また、柿木将棋では、▲44角成と表記した棋譜を読ませてもエラーとなる。
成れない駒を成るという反則手をも表現できるとする立場ならば、
▲44角成も誤りで、▲44角引成とする必要がある。
(追記2)竜や馬に対して、上の代わりに行や入が使われている棋譜も存在する。
(追記3)昔は、金銀に対する直を、駒の動作よりも優先して使っていたらしい(池さんと鈴木さんに教えてもらった)。
構成要素
駒の位置
移動後の駒の位置(筋・段)。算用数字で書く。
ただし、直近の(相手の)指し手と同じ移動先の場合は同とする。
11〜99・同の81+1通り。
駒の種類
移動前の駒の名前。
玉・飛・角・金・銀・桂・香・歩・竜・馬・成銀・成桂・成香・との14通り。
駒の相対位置
指す側から見た移動前の駒の位置。
右・左・直の3通り。
比較対象となるのは、移動先の位置へ移動できた駒たち(駒台にあるものは含まない)。
右は、最も右にある駒を示す(複数の場合もある)。
左も同様。
金・銀・成銀・成桂・成香・とは、同時に3枚以上が同じ位置へ移動可能となりえるので、
これらの駒に対してのみ直が必要となり、使われる。
これらの駒に対しては、対象が2枚しかなく必要ないという場合でも優先的に用いる。
直は、移動先と同じ筋(横位置)の駒を示す(本将棋では、複数の場合はない)。
駒の動作
指す側から見た駒の動き。
上・寄・引の3通り。
上は、上に動いたことを示す。
寄は、上下には動いていないことを示す。
引は、下に動いたことを示す。
いずれの場合も、左右の動きには言及していない(横にも動いていて構わない)。
打
駒を打ったことを示す。
(上に動いても上と書かれない場合があるのと同様、駒を打っても打が示されるとは限らない)
打の1通りのみ。打っていないことを明示する記法はない(重要!)。
成・不成
駒を成ったかどうか。
成・不成の2通り。
表記方法
以下に示すように、上から順番に表記を加えていき、指し手が確定したところで止める。
成が優先されるのは、駒の種類が移動後の駒と異なるため。
不成は本来必要ないが、成らないことを強調する意図がある。
「打を示す」では、盤上からの移動が可能で打の表記がない場合、
打たないことが明示されたと解釈する。
- 駒の位置、駒の種類を示し、
駒が成った・成れるのに成らなかった場合は成・不成も示す - 打を示す
- 駒の動作を示す
- 駒の動作を削除し、駒の相対位置を示す
- (駒の相対位置に加えて)駒の動作を示す
表記を加える(確定するかどうか試行する)順番は上の通りだが、
表記上は以下の順となるようにする。
例えば、駒の動作は駒の相対位置よりも後ろに表記する。
- 駒の位置
- 駒の種類
- 駒の相対位置
- 駒の動作
- 打
- 成・不成
指し手の確定に際しては、
二歩・行き所のない駒・打ち歩詰め・自玉を相手駒の利きにさらす手・連続王手の千日手
これら5つの反則を考慮しない(合法手として生成する)。
また、成れない駒を成る反則も無視する(冒頭の追記を参照)。
つまり、これらの反則に関しては、反則を犯す指し手を表現することができる。
(飛車が駒を飛び越える等の反則手については表現できない)
表記方法の完全性
上記の表記法により、本将棋における全ての指し手が確定する。
桂は、右・左で区別できる。
上・寄・引と右・直・左の組み合わせで、3×3、盤が9個の領域に分かれる。
中央の自分がいるマスを除いた8個の領域を区別できるので、金・銀に関しても問題ない。
竜・馬・飛・角も、最大で8方向にしか動けないため、上の領域分割が有効に働く。
また、これらの駒は最大で2枚しか存在しないので、直が必要ない。
読み方
右:みぎ
左:ひだり
直:すぐ
上:あがる
寄:よる
引:ひく
打:うつ
成:なる
不成:ならず