第23期竜王戦七番勝負第6局

決着局に相応しい名局だったと思う。
こんな世界を構築できるのは、この二人ならでは。
渡辺の△84歩に対し、羽生は▲78金から角換わりを選択。
渡辺の△33銀は早い。△65歩と位を取って受けに回る作戦だ。
43手目、羽生は▲29飛として駒組みが完了。
44手目、渡辺も△43金直として受けの態勢が整った。
ここで、羽生はパスすれば少し有利になる。
しかしルール上パスはできないので、▲18香。
これには後手も△92香だったが、この交換が得になると見ている。
▲29飛型以外なら後手は△42金型で耐えられるという状況。
後手が△42金引〜△43金直を繰り返すという戦略を採るなら、
先手は▲28飛〜▲26飛〜▲29飛でタイミングをとれば、
△43金型を許さずに▲29飛型を得て仕掛けることができる。
ここで渡辺は▲26飛の瞬間に△52金!後手も三拍子を使える。
それを見た羽生は▲29飛で一旦局面を戻す。46手目と52手目は同一局面だ。
△52金型のときに仕掛けたいが、▲29飛型から仕掛けることは叶わない。
そうして羽生は、▲27飛型から△52金型に攻め込むことを選んだ。
こういうの駆け引きの将棋大好き。
千日手含みも好きだけど、パスさせろ合戦がたまらない。
羽生の▲46角は早いように感じる。
しかし続く▲45歩がまた羽生らしい手。
仕掛けのあとも、ゆっくり進む。
見ている側としては実に贅沢で見応えがある。
69手目、羽生は▲35歩で局面を動かしに行った。
スンナリ歩交換が実現しては先手ペースなので、当然後手は動く。
渡辺は△64角を据え、ついに△95歩と攻めるターンを得た!
そののち、先手は端を詰められたが、後手の香も上ずり、▲36銀から攻めていく。
渡辺は△46歩と爆弾を垂らし、羽生も▲83銀と"羽生ゾーン"へ!
その銀は▲74銀成となって、後手も盛り上がる受けをする。
ちょっと相入玉になるんじゃないかという感じがしてくる。
そんな中、羽生は▲39飛と深く引いて猛攻を見せる。
金銀交換して▲63成銀〜▲51角成。これは厳しい。
だが、後手はと金を作っており、玉も存外広い。
そして渡辺は△69銀とかける。
渡辺が銀を打つといよいよ終盤、鋭い手というイメージがある。
▲45銀には△22桂で受ける。
羽生は歩を合わせて空間を作ってから▲39飛と引く。
もはや▲95香〜▲92香成〜▲飛打が回ってくる時代ではないということか。
今や後手玉には詰めろがかからなくなっている。
△57とと寄る手が当然ながら厳しい。
羽生は△67歩を手抜いて▲44銀打と迫るが、△66角で後手玉は詰まない。
あの羽生を相手にして渡辺の終盤が冷徹すぎる。
後手番で互角の中盤に持ち込み、終盤も互角に渡り合う。結果4勝2敗の防衛。
7連覇。その中には、羽生・森内・佐藤が2回ずつ!
自分が将棋を始めた4年前と比べ「タイトルは竜王だけ」という状況に変わりはないが、
確実に将棋棋士としての信頼感は上がっている。
「羽生と互角の終盤」が超絶褒め言葉になってるという時点で
羽生のすごさもたいがいだけどな!