新鋭同士で楽しみな対局だが、思った以上に面白かった。
ニコニコしてるのが阿部で、芸術家みたいな髪なのが牧野。
角道を開け合ってから、▲68飛!え、藤井先生以外にも指す人いるんですね。
角交換四間。△64歩を見てから8筋に振り直し、後手は△35歩と位を取る。
△31玉は先手の銀冠を警戒した(△22飛と回る含みがある)?
阿部は青森出身で、インターネットで強くなった新しいタイプの棋士。
時代は変わってきている。何にせよ、変化することは面白い。
ネット将棋をやっていたからか、早指し棋戦で力を発揮している。
牧野は、総合成績優秀者で予選免除。関西の強い若手らの中にあってこの成績。
△22玉と上がった瞬間、▲75歩と突っかける。
後手陣はバラバラで、このまま戦うことはできないので△32金。
▲74歩△同銀▲78飛で△73歩と受けさせることに成功し、先手ペース。
相手の歩越し銀に対し、▲76銀と立ったのがまた気持ちのいい手。
△75歩で追い返される心配がない。部分的にだが、一方的に先手が有利だ。
後手からは△45歩▲同歩△36歩▲同歩△55角の狙いができているが、
ここで、△55角▲77角△同角成▲同桂を入れてから△45歩。
▲45同歩△36歩に▲47金で、△62飛と回る手には▲56金!
これは△55角も△66歩も受けている、が、△37歩成▲同銀で先手陣不安なので、
これはちょっと普通は選びにくい気がするのだが、そういう棋風なのだろう。
先手は歩得して左桂もはねている。なので、バラバラな今、△47角と打ち込む。
▲58角と合わせる手もあるが、ここは▲65歩と飛車成を確実に防いでおく。
後手は馬を引き、先手も陣形を整える。
ここで▲36歩が冷静だ。逆に△36歩と打たれたら▲同銀△55歩で困ってしまう。
後手は5筋を突き捨ててから△63銀と懸案の銀を活用。
が、ここで▲35歩がまた素晴らしく厚い手。
▲35金と出て馬を追う手もあったところだが、はるかに感触のいい手だ。
後手もこの瞬間△44歩と行くくらいだが、△44銀のときに▲71角がある。
後手も相当堅くなったが、やはり攻め駒が少ない。
先手は飛車を入手して悠々と桂香を拾う。
そんな拾っている時間があるし、桂香を持つことで反撃が厳しくなっている。
△78飛に、▲66角が素晴らしい。桂と金に利かせながら相手玉を厳しくにらむ。
△68飛成と当てても、▲58桂で角にひもを付けつつ玉の腹を守っている。
解説の中村九段(先手阿部の師匠)も「堅いねー」「堅いなあ」と唸る。
ここから角筋を生かして攻める。
思ったほどすぐには決まらないが、あれほど堅かった後手陣が、弱体化している。
105手目▲35銀と被せたところで、先手の銀桂得。
ここで△66竜。
▲同桂なら駒得を保てるが、やはり流れからすれば▲34銀と踏み込みたいところ。
が、ここで△39銀が、形勢はともかく流れを変えうる好手。
単に△69竜では、一旦▲33銀成と薄くされてから受けられてしまう。
先手からすれば、△39銀▲同玉もあるが、
△69竜の王手を受けてから△34金と戻されるのが(駒損はしないが)気に食わない。
で、先手は▲18玉とよけた。
後手は、竜を逃げるか銀を外すかだが、銀を外した。
後手は多少安全になったが、駒損がより激しくなったので、忙しい。
△31歩の底歩はあるが、▲61飛と打たれて二枚飛車がさすがにきつい。
▲38金としたいが、△25香と据えられているので、△49角がきつい。
そこで▲49金としたのが面白い。
△57角は金取り(△46角成▲同銀は△28金)だが、この瞬間先手もガンガン攻める。
後手玉を13に追いやってから質駒の銀を詰めろで補充。
△32金寄の受けに▲同竜と切って(!)受けに回るがどうもすっきりしない。
△22金打と補強される展開となり、また長くなりそうな局面になった。
ここからやはり後手が絡み付いていくが、△17銀と放り込んで、足りなさそう。
戻って、153手目▲32銀のところの解説で▲57角が指摘されていたが、
これは△38銀と対応されて飛車が取れないみたい。
△29金の詰めろに、▲25桂が味のいい決め手。
△同香に王手飛車の▲57角。△35桂の中合いも、取ってしまってそのまま詰み。
終盤が本当に面白かった。
どちらも強く、牧野がここで敗退してしまうのがもったいない。
こういう熱戦は感想戦を放映する時間がなくなるんだけど、それはもうしゃーない。