世界コンピュータ将棋選手権、3日目

どのくらいハイレベルなのか、ちょっと想像できないような決勝戦
実力が非常に高い場所で拮抗している、と思っていたが、
決勝が終わってみると、成績にちゃんと差が出ている。
優勝はGPS将棋で、今日の結果だけで他のどのソフトよりも強いとは言えないが、
この8チームの中でもかなり上位の力を持っていることは確かだ。

1.GPS将棋

過激に攻めかかる傾向がある。
去年までのGPS将棋も、軽い攻めをつないでいく印象はあったが、
今回は、見つけた場所を確実に叩き潰してくる感じがした。
797台のPCを使っているということだが、優勝できたということは、
その量のPCを生かすことができたということで、これは大変な成果だと思う。

2.Puella α

4台のPCを使い、2位はさすが。ネーミングセンスもさすが。
Bonanzaライブラリを使いながら、入玉にもある程度対応できている。

3.ツツカナ

1台の最新ハイスペックPCが、本気を感じさせる。
角換わりで激指に勝った一局は、解説の西尾六段も大絶賛だった。
鋭く、見ていて爽やかな気分になる将棋。強かった。

4.ponanza

本気のponanzaは本当に強かった。強くしようとして強くなってる感がヤバい。
先手では相手の作戦に追随し、後手では角道を止めた力戦居飛車
今回は定跡選択に工夫をするソフトが多くなっていたが、
あの角道を閉じた居飛車から力で勝つ様は見応えがあった。
解説では、鋭いというよりふわふわした棋風だと言われていた。

5.習甦

いつ優勝してもおかしくないくらい、毎年好成績を挙げていたが、今年は5位。
上位ソフトに対しては、ponanzaに勝っているが、それだけだ。

6.激指

ニコ生のインタビューでは、相当に自信がなさそうな様子だった。
ただ、6位とはいえけっこう勝っているので、強くなっているのだろう。

7.YSS

やや古風な戦型が多くて面白かった。
決勝組の中ではかなりクセのある棋風だが、それで戦えるというのがすごい。

8.Blunder

星取りだけ見ると、去年と同じような成績だが、
それはつまり相当に強くなっているということだ。
不利になっても最後まで食らいついてから投了する棋風は変わっていない。
角道を閉じないタイプの力戦形が多かった。
居飛車中飛車、角道解放四間飛車穴熊。一体何を考えているのだろう。

ほか

振り飛車はチラホラ見られたが、ゴキゲン中飛車や石田流がなかった。
勝ちにくいのか、プロ間で減ってきたからか、何なのか。
上位ソフトはたくさんのPCを使っているものが多いが、
これは何台も使って強くできたのが偉いのだし、
強くならないなら、PCを用意できないだろう。
ニコ生解説は西尾六段で、今日も面白かった。
自分の棋力では、棋譜を少し楽しむことはできても、意味は全くわからないので、
こうしてプロ棋士(将棋において人外の強さを持つ人間)が解説してくれるのは
非常にありがたい。
強いソフト同士が当たると、必ずどちらかが負けるということが信じられなくなる。
こんな当たり前のことがわからないのは、何か神秘的なものを感じているのだろう。
これはあんまりよくない。

新しい領域へ

今回は入玉が絡む将棋が多かった。
程度の差こそあれ、みんな入玉対策をしているということだし、
そこに穴があれば強いソフトでも負けに直結する、そんな厳しい世界だ。
入玉のほか、定跡の選択についてもそうだが、
こういうことを気にしないと、いくつも星を落としてしまう領域に来ている。
上位5チームは電王戦に出るわけだが、いやどうなんだこれ。
以前には、「全勝や全敗はない」と予想していたのだが、ほんとにそうか?