NHK杯、豊島・渡辺

渡辺は今日も△84歩。対して豊島は▲78金から角換わりを選択した。
△66歩と位を取り、去年の竜王戦で見たような形に。
あのときは渡辺が見事なタイミングの取り方で先手に仕掛けさせていた。
今回は豊島が▲68飛という作戦。
解説は佐藤九段。ここでは後手が最善形なので、先手は後手に一手指してもらいたい。
そこで、まず▲68飛として、△62飛と受けさせてから▲48飛と回る。
ここで△82飛なら▲28飛で、先手が一手パスできたことになる。
これに対して渡辺は、自分も△42飛として、▲45歩と仕掛けさせてから△82飛。
これでもし▲28飛と戻れば仕掛けさせた後手の成功なので、▲44歩と取り込む。
竜王戦のときも書いたが、こういうパス合戦は本当に好き。
渡辺は突き捨てを金で守る力強い指し方。
△59角から馬を作る筋があり、△46歩が入る。
後手がうまくやっているように見えたが、豊島も桂でラインを作ってから▲77角!
ただ、こういうときに落ち着いて悪くない手を選べるのが竜王の強さだと思う。
角換わりの将棋を見ていると特に思うが、将棋には本当に色々な手がある。
こんな豊かな世界で戦うことができるプロ棋士を羨ましく思う。
自分が戦っている将棋の世界は、比べるとひどく貧相なものに見える。
豊島は端を手抜いて、渡辺玉の端に手をつける。
「お互いに相手の言い分を聞きませんね」この辺りは本当にそんな感じ。
端が入って、▲85桂と跳ねて、かなり先手の調子がよさそうに見えたが、
ここで▲81竜の角取りを放置して△69銀!
勝っても負けてもここが渡辺ゾーンという気がした。
渡辺が69や79に銀をかけて、それが決め手になって勝ったのを何回も見てきた。
ここに打って負けたこともあるけど、それでダメならしょうがないだろう。
駒が足りないように見えるが、後手玉はZ。詰めろもかかりにくい。
この短時間のNHK杯で、若くて終盤も強い豊島を相手にして、
この渡辺の鬼神のような終盤力。歩が足りているというのがヤバい。
高校野球により、将棋講座は10:05からの放送。囲碁・将棋フォーカスが休止。
今年は元々の放送時間が短いので、講座もNHK杯も短縮にはなっていない。