NHK杯、豊島・畠山鎮

先手は豊島。最近、実力が高いレベルで安定してきた感がある。
後手は畠山。攻め将棋だが、インタビューでは闘争心という言葉を出していた。
△84歩から角換わりに。相腰掛け銀。
後手の△65歩はよくある筋だが、▲45歩とこちらも位を取るのは見慣れない形。
これでどうやって先手は手を作るのかと思っていたら、後手から△44歩の反発!
先手の打開の仕方を見たかったので、その意味では少しがっかりしたが、
闘争心がむき出しになった、畠山らしい手だとも思った。
しかし、この棋風で角換わり後手をやると、(勝敗で)かなり損してそうに思うが…。
▲44同歩△同銀に▲25歩△43金右。
ここで先手は飛先交換ができる。しかしスルーで▲88玉と入る。
そしたら後手は△33銀と引いて飛先を受けた。
つまり、先手79玉型なら飛先交換されても後手44銀を生かした攻めが成立した?
4筋の歩を、お互い手持ちにしているという将棋。豊島は▲75歩。
解説で、パスのような手と言われた。なるほど後手は動かす駒がない。
実戦は△64角だった。これもなるほどという手。
が、▲74歩〜▲41角がある。74の地点を受けても、▲65銀(!)という強手が。
ここ、畠山の指し手や時間の使い方は、明らかに変調を思わせた。
畠山は、歩を突き捨てたり、歩を打ったり。かなり辛(つら)そうに見えた。
悪く言えば、苦し紛れの歩。
一方の豊島は、優勢になっても細かく時間を使い丁寧に局面を進めていく。
時間の使い方も冷静で、ちょっと豊島は強すぎると思った。
ただ、意外と長引いている。もっと、後手がどんどん酷くなる将棋かと思っていた。
後手は飛車が受けに利いている。角を入手しての△63桂で、実戦的には先手もイヤだ。
△42飛も、今度はタテの防御と△49飛成を見せてなかなか。
後手が、歩と桂で作った拠点から、馬を消して成桂を残したのはすごかった。
ずいぶん強欲だなあと思っていたのだが、それがわりと通ってしまった感がある。
玉の堅さが完全に逆転していて、これは後手いけるかもと思った。
ただ、駒損で攻め駒が少なく、後手が切れそうではあった。
両者、歩を使った応酬。畠山の歩は怪しく、豊島の歩はわかりやすい。
豊島、慌てた感じで▲75金。後手は角を取られずに詰めろが続けばいいが、という解説。
この解説は、角の守りがなくなると後手玉は詰むという意味だったかな。
ここで、なのかどうかはわからないが、一気に逆転。
端を突かれてどうしようもなくなり、△77同成桂に豊島が投了。
勝った畠山は、疲弊した感じのため息。
「勝った方が激しく消耗している」を、3月のライオンで数年前に読んで以来、初めて見た。
後手がよくなったのは本当に最後のほうだろうから、ちょっと意味は違うけど。
結果を知ってから棋譜を見返しても、畠山の歩は苦し紛れとしか思えないのだが、
それでも、その歩で、離されずに付いて行って、最後は追い抜いた。
相手の攻めで駒を入手し、安い駒でしつこく食らいついて、それを通した。
この畠山の攻めは感動的だった。