NHK杯、中村太地・渡辺

渡辺が後手で角換わり。後手73歩型でタイミングをとる。先手に色々やらせて、▲77角を生かした攻めが来そうなところで△12香!「今攻めないと△22銀と引く受けが生じますよ」と言っている。そこで▲45歩と攻めたのだが、その瞬間に△27角と打ち込む。▲47銀〜▲28飛で取られてしまう角だが、▲45歩の瞬間なので△45歩〜△46歩で銀に当てることができる。
▲35歩も、取られそうな歩を逃げながら嫌みを付ける冷静な手。後手の対応は自然で、△35同歩と取って、さらに△36歩と伸ばしていく。▲65歩〜▲44歩にも、平然と△37歩成で桂を取る!これには▲34歩△同銀▲44歩成という非常に嫌な攻めがあるのだが、そこでも△33歩と受けて、金は取られるが先手の角の働きを弱めている。
後手は△74歩として先手陣の弱みを突く。△75歩が入ると角頭が酷い。先手玉と飛角が近く、当たりがきつい。そこで▲98玉だが、これではいかにも辛(つら)そう。横の攻めから遠ざかるというより、縦の攻めに近づいている。
端攻めが入り、これで一気に後手が攻め潰すかと思ったが、先手もよく粘って、すぐに終わるような形ではなくなった。ただ、ここから後手の因縁の付け方がすごい。まず△66歩とジッと伸ばす。この終盤に!そして△86歩。これは△54角の王手竜があるので取れない。そこで、空いた空間に△85桂と打つ。これで△89角が厳しい。最後、▲78角という根性の受けに、△69角▲同角△同竜と、その▲78角を無意味にする厳しい返しをして、先手投了となった。
負けはしたが、中村の強さを感じる一局だった。技を食らっても冷静に対処し、悪くなっても変わらず食らい付いてくる。終盤は顔が真っ赤だ。勝率が高いわけだよ。
渡辺も当然のように強かった。攻められそうなところで△12香はびっくりした。角換わりでの攻めさせ方が抜群にうまい。有利な終盤で速度差をつける技術もすごい。