NHK杯、森内鈴木戦

先手が森内、後手は鈴木。
おそらく鈴木のゴキゲン中飛車に、森内が▲37銀急戦とかだろうと思っていた。
森内の対局前インタビュー。
「全体的には勝ったり負けたりですけど、最近少し上向きかな(調子が)と思っています」
「手厚い将棋を指したいと思いますね」
解説の島によると、森内は将棋の(結果ではなく)内容で調子をはかるのがうまいらしい。
あと、森内の「手厚い」発言はけっこう珍しい気がする。
やはりゴキゲン中飛車になったが、瀬川広瀬戦でもあった、飛車を切る形に!
この戦型で先手が勝ったのを見たことがなく、そもそも飛車取り自体いかにも受けづらい。
だが、攻められてる将棋を平気で優勢と判断する森内なら面白くなると思った。
29手目、森内は▲18飛!△27銀を打たせてきた。
2枚換えで馬ができている。先手は飛車を持っているが、後手の陣形は低くまとまっている。
そしてこれまた受けづらそうな△51香。
どうするのかと思ったら、いきなりの▲51飛成から▲11角成で2枚換え!
△58香成▲同金と手順に上がるメリットよりも、△51金と乱すほうが大きいのだ。
これで、駒割は銀香交換で後手の駒得だが、△27銀が遊んだままでは後手が辛くなる。
そして、▲58香〜▲59香の2段ロケットが存外厳しい。
△55歩と香取りに打って馬の利きが止まった瞬間、先手は実に色々な仕事ができる。
先手は桂と銀を手に入れ、次の▲62銀は馬の利きが戻っても厳しく入った。
56手目△61銀は非常手段の受けだが、▲同成香で本当に先手の攻めが遅くなってるの?
そう思って見ていたが、△44角がなかなかにいい味の手。確かに耐えてそう。
ただ、それに対する▲66桂も絶妙の切り返しで、受けと▲74桂の攻めがすごいバランス。
後手は香を捨て、王手の飛車打ちで74の地点を受けるが、
1回叩いて利きを74から逸らし、そして▲78玉サッと逃げておくのが快感。
飛車が素通しで怖いようだが、金気を渡さずに詰めろをかければ全く問題ない。
後手はここで△73馬と引きつけ、どう攻めたらいいのかよくわからなくなったが、
ここで先手の森内は▲77桂!
飛車を追うだけのような、また自玉も薄くなりそうな桂跳ねを、この終盤で。
ちょっと意味がわからなかったが、ここで鈴木が投了。
この▲77桂は、詰めろ飛車取りみたいな手だったらしい。
おそらく、ここしばらく森内が指していたのは、おそろしく読みの入った手で、
それを受け続けたあとに▲77桂をやられては、投了するしかなかったのだろう。
それにしても森内が強かった。
羽生に引き離されることが一度もなかった羽生世代の恐ろしさとでも言おうか。
今日の格言「将棋は、と金を作るゲーム」。