将棋電王戦はじまってた

第1回将棋電王戦 米長邦雄永世棋聖 vs ボンクラーズ - 2012/01/14 09:50開始 - ニコニコ生放送
1/14(土)9:50〜19:20の9時間半。
棋譜など。電王戦リアルタイム実況 by やねうらお
将棋の棋譜でーたべーす
9:45から、あのPVが流れる。
9:50になり、矢内女流四段と渡辺竜王が登場。これはホントに豪華な解説。
どちらが勝つかのアンケートでは、53.7%が米長永世棋聖を支持。
これに対しては「いやこれ非常に難しいです」と、いつもの渡辺。
少なくとも自分が将棋ファンになってからの渡辺は、失礼なことを言わないし、
それでいて言うべきことはきっちり言って筋を通すので好感が持てる。
「見世物的な力関係ではもうない」渡辺vs.Bonanzaのときとは強さが違う。
「3時間あればもう人間も言い訳はできないなという持ち時間ですね」とも。
ボンクラーズのR3300には、「そりゃあもう、人間には出せないです」。
立ち会いは谷川九段。これまた豪華な立会人。
谷川は、礼儀正しくてゲキレツにかっこいい。すごい存在感だ。
PCにトラブルがあり、10:21頃の開始となった(10:00開始予定)。
終了後の情報によると、「サーバの1台にディスクがマウントできなかった」。
ハードを準備する人は別にいたようで、ボンクラーズ作者も詳細は知らない様子。
前日深夜まで順位戦をやっていた部屋なので、準備は大変だったろう。
対局が行われるのは、将棋会館の特別対局室(!)だが、
この場所でのイス対局は始めてのことらしい。
米長の体力を考えれば当然なされるべき措置と思う。

対局開始

いよいよ対局開始となり、「先手ボンクラーズ▲76歩」の声が響く。
それを受けて、中村太地五段が指す。指し手と読み上げの関係が逆だw
なんて思う間もなく△62玉!!!!!!!!!!!!!!!!!
いやまあ言われてみればの手。
最近は米長宅のボンクラーズに相当勝っているという話もあったし。
ていうか渡辺は作戦を事前に聞いていたとかさっき言ってたけど、
これを聞いて知っていたのかよ!
渡辺は△62玉について「悪手かどうかはわからない」「人間同士ではほぼない手」。
カメラがなかなか退出しなかったが、取材の人が多くて入りきらなかったため
順番に撮影していたということだった。撮影は5分間で終わった。
17手目▲65飛と歩を取り返したところ、通常△64歩をすぐに打つ必要はない。
が「コンピュータ相手なんで△64歩」という解説。
渡辺は、自身もBonanzaと対局したし、今回米長から話も聞いているので、
コンピュータ将棋に対する認識はプロ棋士の中でもかなりのものだと思う。
ブログとかを見るかぎりPC自体にはあまり詳しくないようだが。

自重する米長

この一手前、ボンクラーズは▲65歩△同歩と突き捨ててから▲58金左とした。
これは、△64銀と上がれば、いちおう歩を守れる形である。
だが、そうはせずに短考で△63銀、普通の形に戻した。
プレマッチのときには、ついつい勝ちにくくなる手を指してしまったが、
今日の米長邦雄は勝ちに来ている。尋常ならざる決意を感じた。
32手目△75歩も、本譜の合わせで相手に手得させてしまうのだが、
そういう「普通の感覚では指しにくい手」を当然のように指してくる。
何が米長をこうまでさせているのだろうか。
端も受けない。「受けるとぶつかるんで」
△83金〜△74歩や△65歩のときにはかなり危ないと思ったが、通った。
特に△65歩が通って6,7筋を制圧できたのには驚いた。これは研究だろう。
ここでは本当に後手がよくなったと思った。
自分が先手を持ったら、勝てる気が全くしない。

色々

今回のボンクラーズは1秒間に1800万手読む。
もちろん1台のPCで1800万手読むのよりは弱いわけだが、
クラスター並列で何台ものPCを生かせるボンクラーズは素晴らしい。
20世紀に1億手読んでいたDeep Blueとかすごいモンスターマシンだな。
今回、後手玉の位置が変なので評価関数が変な挙動を示さないか心配していたが、
特におかしいところは(自分には)見えなかった。
ボンクラーズの評価関数はBonanzaに似ていると思われるが、
これは玉と他の駒の位置で点数を決めるもので、
プロの棋譜にあまり現れないような位置の玉に対しては
点数の学習がしにくい意味がある。
「先に攻めるメリット、プロでも少なからずある」と渡辺。
相手が間違えてくれるかも、ということだが、コンピュータにはそれがない。
渡辺から、タイトル戦体重計持参、女流棋戦のおやつ時刻など色々面白い話が。
二日制の対局で相手の前で寝ちゃうのがお互い様とかぶっちゃけすぎだ。
渡辺がどんな本を書くかという話で、「対コンピュータの戦い方」!
「誰が買うの」って、そんな本、欲しいに決まってるじゃんか。
まあ冗談はさておき。

千日手模様

絶望的な厚みを築いた後手に対し、ボンクラーズはついに変な動きを見せる。
変と言っても、読みが間違っているとか、無い手というわけではないけど、
例えば51手目▲66歩の合わせは、△同歩▲同飛△65歩▲96飛となったが、
この手順が予定なら、直接▲96飛としたほうが紛れがないぶん得だ。
こういう手順は、(時間稼ぎやハッタリ以外では)人間は指さない。
千日手の可能性が少し出てきたが、実際には、少しずつ局面は動いていた。
そもそも、後手には千日手にするメリットがあまりない。
通常は先手番が得られればいいのだが、現局面がかなりの成功図であること、
時間の短い指し直しは人間不利でリスクが大きいことなどがあった。
一方、先手もこの時点で千日手にするつもりはなかったと思われる。
おそらくボンクラーズは少し自分がいいと思っていただろうから、
普通の実装なら千日手は避ける。
後手が本気で千日手を目指したらどうなったのか、気になるところだ。
とりあえず、後手が手を変えてきているのだから、先手も千日手は考えない。
ボンクラーズは毎回、3分とか考えている。
後手が何をやってきても最善の状態で迎えうてるように考えているのだ。
そして、細かく動きながら▲56歩〜▲66歩!

局面が動いた

△34歩と開けたが、ここで既に渡辺は先手を持ちたいと明言していた。
たとえ△34歩としていなくても、いつの間にか75の地点が受からなくなっている。
藤子・F・不二雄のSF短編「ひとりぼっちの宇宙戦争」を想起させられたよ。
将棋というのは感情を持ったほうが不利なゲームなんだろうか。
自分をコピーした感情のないロボットと将棋で対決するとしたら、
そこで人間の感情が生きるということがありうるんだろうか?
そんなことを思った。
また、お通夜になってきた。
コンピュータがミスしないタイプの局面になってきた。
見てくれこの全軍躍動の先手陣を!何という気持ちよさだ。
しかし、渡辺と矢内がいても、人間の敗勢でこの重い空気は免れないのか。
これはずいぶん深刻であるように思う。

終局

17:14頃、後手の米長が投了。113手だった。
5分ちょっとの間、その場で感想戦のようなことをやっていた。
そしてすぐに記者会見の準備へ。
記者会見の会場には山崎バニラの姿があった。
山崎バニラとは、ふたご姫のティオや、ぱにぽにメソウサで有名な声優である。
声に特徴があるので、聞けば「この人が山崎バニラか」とわかるだろう。
会見の準備には、妙に時間がかかっていた。
結局、始まったのは18:16頃。終局から1時間が過ぎていた。

記者会見

米長「会長」がしゃべり出す。「ルールが変わりました」!?
来年5局一斉対局。きたわああああ!!!!これは嬉しい。
まあしかし、これは嬉しい変更だから嬉しいと思ってしまったが、
1年に1局、5年かけての5番勝負という決定を簡単に覆すのはどうかと思う。
この人の言う「決定」とはこの程度のものだと知らしめてしまった。
そして、△62玉に関する説明。
ボンクラーズに対する最善手と信じて指したということらしい。
自分のことを悪く書くのはいいが、△62玉に失礼な書き方はするな、
そういう姿勢。
△62玉については相当深く研究していたようだ。
「序盤の金銀4枚密集までが作戦」
振り飛車に対して出足を止めておもむろに圧迫していく」
「手を読むというよりも読ませないという作戦」
万里の長城を築く」
「技術的なことを言うと1冊の本になってしまう」
序盤は完璧だったが、ミスが2つあった。
まず、80手目△66同歩では、△86歩▲同歩と突き捨てて△72玉で優勢だった。
以下は▲65歩△同桂▲66角△同角▲同銀△86飛。
人間相手ならそう指したが、安全に指していたので切り替えができなかった。
この切り替えは本当に難しかっただろうと思う。
つい本筋の手を指してしまうところ、無理矢理ガマンしていたのに、
キッカリこのタイミングで戦闘モードに切り替えるなんてできるわけがない。
そして2つ目の致命的なミスをしてしまう。91手目▲77桂のときに気づいた。
92手目から△74歩▲同歩△同銀▲75歩△同銀左と読んでいたが、
そこで▲65桂とされるのをうっかりした。取り返しのつかないミス。

これからの電王戦

来年のいつになるかわからないが、5対5の一斉対局をする。
主催者はドワンゴ社(他)である。
おそらく選手権の上位5チーム?将棋連盟が強い順に5チームを選ぶ。
来年やった後はわからない。あなたの結婚生活みたいなものです。
続くだろうということでやってるが、わからない。
米長はファンが喜ぶことを、ドワンゴ川上は意義があることだと思って。