第2回将棋電王戦第5局

GPS将棋が、「強えええええ!!」という感じではない。何か「運がいい」という感じ。指運がよすぎて、結果として三浦八段にいい手順がない。「運も実力のうち」という言葉の恐ろしさを見た気がする。たぶんGPS将棋は毎回運がいい(もちろん、プロ棋士に毎回勝てるという意味ではない)。
対局前、GPS将棋が対人戦で本当に強いのか少し不安になっていた。600台超のPCを使うのがどう効くか自分はほとんど知らないし、Bonanzaとは棋風がちょっと違うのでそういう意味でもわからない。
しかし、実際に将棋を見てみると予想を超えた強さだった。事前に、2手目△84歩なら三浦勝ちと予想していたが、これは完全に外れた。脇システムという、三浦八段が当然深く研究している形で、プロがちょっと早いと感じる仕掛けをGPS将棋がして、三浦八段はそれを逆用して盛り上がり、上手く厚みを築いた気がしていたが別にそんなことはなかったぜ。
両対局者のレベルが高く、もはやボンクラーズの評価値は、プロ棋士とコンピュータの読みが合うかどうかを示すものになっている。

流れ

▲76歩△84歩という出だし。先手の三浦八段は、ここで矢倉と角換わり好きなほうを選べる。選ばれたのは矢倉。確実に力が出せるということだろうか。駒組みが進み、三浦八段はさらに脇システムを選んだ。
1筋(GPS将棋にとって玉側の端)だけ突き合いがある形になり、三浦八段はそれに反応して角を引く。そこでGPS将棋は△75歩。早々と仕掛けた。「GPSって攻めが軽いんだよなー(要出典)大丈夫かな(攻めを切らされるのが心配)」と思っていた。
ここで、三浦八段の対応が圧巻だった。▲74歩と突き出して、守りの銀をぶつける!先手はかなり怖い形になるが、よく見れば後手の攻めが細い。先手は厚く、いい形になった。これはコンピュータの弱点が出たかと思った。
ここから、さらに▲86歩と突っかけて盛り上がっていく。ここではさすがに、コンピュータ対策でスクラムトライを狙っているのかと思った。が、実際どうなんだろう。自分には、今日の三浦八段は駒を前へ押し上げることにこだわりすぎているように見えた。
コンピュータ側が盛り上がる手を軽視しているなら、当然人間が盛り上がる展開になる。しかし、そういう展開になるケースは他にもある。それは、人間が盛り上がる手を過剰評価している場合だ。そんなことを思いつくくらいの将棋だった。
今回、指し手が非常に難しく、そういう意味ではこれまでの電王戦より楽しめなかった。これは普段のタイトル戦などでもあること。自分の得意分野にはまると、より楽しめる。ただし、コンピュータとプロ棋士が当たってこうなるというのは、迫力も感じさせる。両者ミスがない。
ある程度進んだところで、プロ棋士の形勢判断が後手寄りになっていることに驚いた。先手がうまくやっていると思っていたのに、そして控え室の判断も先手がよかったのに、今は違う。形勢が動いていたことに気づかなかった。「いつの間にこんなに悪く?」と、3月のライオンにあったようなセリフが浮かんだ。
三浦八段の残り時間が2分になった。GPS将棋は、既に自分の勝ちを読み切っている。どうやっても負けの局面を前に三浦八段が考えている。ちょっと悲しくなった。時間がなくなるところで、三浦八段が投了。
終局後ずっと、三浦八段はうつろな感じで。一体どんな気持ちなのか。どこが悪かったのかわからないというのがやばい。