第2回将棋電王戦を振り返る

第1局 ▲阿部四段△習甦

プロが簡単に勝ったように見える将棋。でも、簡単に勝つ人がいちばんすごいのだ。自分にはそのすごさがわからないけど、途中図からBonanzaと指してみると確かに勝てない。
観戦者としてはつまらなかった。また、コンピュータの序盤はまだプロに通用しないのではないかと不安になった。

第2局 ▲Ponanza△佐藤四段

酷い序盤だが、プロでもそれをはっきりとは咎められない。すると、実は酷くなかったとも思えてくる。Ponanzaらしさが出ていた。
中盤、Ponanzaの力強さに対して、それを押し返すような佐藤四段の力が衝撃的だった。終局後の会見で、開発者山本さんが「びっくりした」「感動した」ということを何度も言っていた。
最後はミスが出ての決着。ブログで「もっと指したい」という意味のことが書いてあり、どんなにか悔しいだろうと思った。将棋はこれがあるから怖い。

第3局 ▲船江五段△ツツカナ

ツツカナの△74歩から始まり、逆転に次ぐ逆転。逆転が多いと面白い。泥臭い感じではなく、双方の強さが見える将棋だった。
一番楽しみだったカードだけど、ほんとに一番楽しめた。

第4局 ▲Puella α△塚田九段

指差し確認がよかった。相手が目の前にいる普段の対局では、あれはできないだろう。終了図からさらに本気で勝ちに行ったらどうなるかも見たかった。入玉の印象が強いけど、「昔の谷川浩司」と塚田九段に言わせたPuella αの攻めも見逃せない。

第5局 ▲三浦八段△GPS将棋

戦型としては完全に三浦八段の土俵だったはずだが、GPS将棋が意表の仕掛け。見た目は先手がよさそうだったのに、いつの間にか形勢は後手に大きく傾いていた。よくわからない将棋で、GPS将棋の得体のしれない強さを感じさせた。

5局を通して

みんな、コンピュータ側が先に攻めている。成立しているかどうかは別にして、プロが一目無理と思うような仕掛けばかりだった。受ける展開も見たかった。
5局とも全然違う将棋になり、本当に面白かった。みんな棋風が違う。1局だけだったら、観戦者がよりコンピュータ将棋を誤解しやすいイベントになっただろう。
今回の電王戦で、5人のプロ棋士のファンになった。三浦八段のことはある程度知っていたけど、他の棋士は名前と有名なエピソードくらいしか知らなかったので、今回改めてプロ棋士にはこんなに素晴らしい人がいるんだとわかった。
コンピュータに負けたプロ棋士が、なぜあそこまでの精神状態になるのか想像はできないけど、1回の将棋にそれだけのことを思えるというのは、本当に素晴らしいことだと思う。

各局の戦型

棋譜へのリンク付き
第1局 ▲菅井五段△習甦 先手中飛車
第2局 力戦相居飛車(コンピュータがその場で決めた)
第3局 △74歩からの力戦(コンピュータ側が誘導)
第4局 後手飛車先不突き矢倉(プロ側が横歩取りを回避)
第5局 脇システム(コンピュータ側はランダム定跡)