NHK杯、渡辺・広瀬

広瀬の振り穴と、渡辺竜王の戦いだ!
個人的には渡辺の棒銀が見たい。有力だと言っていた(穴熊のほうが有力なんだろうけど)。今回は相手が穴熊だから、居飛車側も穴熊
「渡辺竜王と言えば穴熊」とかよく聞くけど、これは違うと思う(というのもよく聞くけど)。相手が隙を見せたら合理的にクマるのが渡辺というイメージがある。あと、竜王戦で見せた開き直りにも近い穴熊。こうした感覚は戦型を問わず現れる。
さて、初手から自然な手が続いて相穴熊に。広瀬は、金2枚を6筋に置いたまま、△54歩〜△55歩と攻めを見せる。この時点で、4枚穴熊に角が付いた先手と、金が離れている後手、堅さが全然違う。堅さで劣る後手は、この早い仕掛けが主張。
後手は先に香得して、先手も自由度が低いように見える。ただ、先手玉は堅く遠い。一気に攻め込める局面ではない。
▲33歩(取れば▲21竜)が、馬の利きを止めるいい手だと思ったけど、次に▲23歩から桂馬を取りに行くしかないようではつらい。この、味の悪い▲23歩が、「実は好手」かどうかの勝負だと感じた。実際は既に先手が苦しかったようだ。
気づけば堅さが逆転している。あれほど遠かった先手玉が、具体的に見えてきた。後から考えると、広瀬の指した手がことごとく素晴らしい働きをしている。早い△57歩成で角切りをなくしているし、△51香は竜の横利きを遮断。その上で、4枚穴熊に△85桂と打った手の破壊力がある。
△85桂からは一瞬だった。流れるような手順で勝ってしまった。ほれぼれしながら見ていた。
終局直後、勝った広瀬が震えているように見えた。露骨におかしかったのが渡辺で、ずっとキレ気味だった(笑)。駒を投げやりな感じで打ちつけるし、「そんなのやってもしょーがない」とか言うし。形勢が悪くて開き直ったときの竜王がこんなイメージだ。