NHK杯、広瀬渡辺戦

広瀬王位の先手。やはり相穴熊。渡辺竜王穴熊を見るのも久しぶりだ。
実はタイトルホルダー同士の戦い。
迫力というより、指し手に対する絶大な信頼感がある。
竜王が早く5筋の位を取り、△53銀と引く手に▲56歩と反発して戦いが始まる。
角交換後の突き捨てに、後手の渡辺竜王は飛車交換上等とぶつけてくるが、
先手は▲65銀と出てそれを拒否。
確かにこの局面、56の銀が中途半端ではあった。
▲65銀〜▲54銀と、浮き駒を自然な駒運びで活用していくのが広瀬王位らしい。
▲75角も好感触。1話完結の長寿アニメを見ているような気持ちよさだ。
ここからも、二人のらしさが出る戦いが続いた。
後手はと金を作り、先手は竜を作る。
竜王に「私はと金を作りましたが、あなたは大丈夫なんですか」と言われたら、
ちょっと普通怖いでしょう、縮こまっちゃうよ。
ここから、後手は更に△44金と力強く繰り出していく。
角交換で上ずった金を使って銀を入手し、と金の攻めに加える。実にうまい。
この時点で、ちゃっかり自玉を堅くしてあるのが、渡辺竜王のすごいところ。
加えて、と金で穴熊に食いついて、素人目には後手勝勢にも見えたのだが、
先手は竜の守備力もあり、千日手の可能性もある局面となった。
盤の右下、狭い場所で金銀が入れ替わる展開は、どうぶつしょうぎを思わせた。
1回目の△49金が、盤の意外な狭さで成立する、どうぶつしょうぎらしい手。
そしてついに△86歩と、新しい戦地へ移る。
駒の損得がなく、後手玉は堅いまま、先手は大事な竜をなくす展開。
これではさすがに先手がきつい。
最後は△94角。将棋盤とはこんなに広かったのかと思わせる射程の長さ。
192手という長手数で、後手の渡辺竜王が勝利した。