NHK杯、糸谷・丸山

糸谷が先手。最近のNHK杯ではずっと後手で一手損角換わりだった。
今日はどんな戦法で来るのか楽しみだ。
▲76歩△34歩▲26歩△84歩。横歩取りか一手損角換わりになりそう。
ここで、先手の糸谷は早めの▲78金。
感想戦によると、▲25歩△88角成の一手損角換わりを避けた意図のようだ。
金を上がってからの通常の一手損角換わりのほうが指す気になるらしい。
丸山は普通の横歩取りに誘導。しかし、ここで糸谷が長考。
横歩取りを受けて立つかどうかを考えていたのだろうか。
飛車の引き場所や、その後の展開を考えていた可能性もある。
結局、横歩取りにはならず。糸谷は飛車を引いて、丸山が横歩を取った。
中盤、▲95角という、いかにも本筋でないっぽい手を糸谷が指し、
これを丸山が見落としていたため、勝負あった。
狭い角だけど、▲77桂にもヒモを付けている。
糸谷は考慮時間9分を残して決勝進出を決めた。
終局の早さだけ見ると、巨人の上原を思い出すな。
勝戦のカードは、去年に続いてまたしても羽生・糸谷。
さて、感想戦が面白かった。谷川と糸谷が真っ向からぶつかり合っている。
まず、糸谷の序盤講座が非常に興味深い。
▲76歩△34歩▲26歩△32金▲25歩のとき、後手が△84歩とすると、
▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲28飛と飛車を深く引いて相掛かりになり、
これは先手有望な変化が多いということだった。
そこで、この形へ先手から誘導しようとしたのが今回の形。
また、後手85飛の真似をして▲25飛とするのは、相掛かりになったとき損。
そして、これを元にした主張で、糸谷と谷川がぶつかり合う。
まず糸谷が、昔は先手が横歩を取らない将棋もけっこうあって、
それでそこまで先手が悪くなさそうだと話す。
それに対し谷川は、「▲28飛と引いても先手のリードを保てるという主張なのですね」。
横歩を取れば更に得をできそうとはいえ、▲28飛でも先手の利が残っているなら
▲28飛という手も(妥協はあるが)「ある手」になる、というニュアンス。
その谷川の発言に対して、糸谷は怯まず自説を続ける。
先手から横歩を取る手がそこまで得にならないという主張だ、と切り返した。
いきなり谷川の意見を全否定している。
通常の横歩取りは、先手の形が乱れるのが後手の主張、
それならば、△76飛と横歩と取られても、その主張を先手番ですればより得。
後手は横歩を取らない手もあるが、やはり相掛かりを避ける人が多い。
つまり、糸谷は横歩を取ることがあまりよくないと考えているようだ。
先手で横歩を取るよりも、後手に横歩を取らせたほうがいい。
先手で横歩を取るよりも、角道の開いた相掛かりにしたほうがいい。
だから、横歩を取ることのみに先手の最善手の可能性を求めてはいけない。
そう主張しているように見えた。