王位戦七番勝負第1局 指し直し局

藤井の勝ちを願っていた。正直、千日手にはなってほしくなかった。
まず持ち時間が、藤井のほうが少ない。
もっと重要なことは、持ち時間が1時間38分しか残っていない。
これでは、王位戦の持ち時間と比べて、相当に藤井が勝ちにくいと思った。
そんな条件で先手番の作戦の貴重なストックを放出しなければならない。
(これに関しては、藤井先生は嫌だと思っていないと思うけど)
後手が先手に千日手を強いることができた。
これは、ある意味では勝利を得たような感覚さえ覚えることだ。
しかし現実の勝敗は別だ。おそらくは、羽生の勝ち…。
2012年7月10日〜7月11日 七番勝負 第1局 羽生善治王位 対 藤井猛九段|第53期王位戦
さて、30分ほど間をおいて、指し直し局が藤井先手で始まった。
▲66歩!そして△86歩!
▲66歩は言うまでもなく藤井システムにするという手。
ここで△86歩がまたすごい。ここで△86歩と指す人はあまりいないと思う。
もちろん△86歩は一番普通の手なのだが、先手の言い分を聞きすぎな感がある。
ここでは△72銀の飛車先保留や、△32飛の相振り(有力とされている)がある。
居飛車党の視点からみると、無条件に矢倉を選ばせている意味がある。
それなのに△86歩。藤井システムをやってこいと言っている!
藤井システムになった。
55角急戦だ。藤井システムが絶滅する頃に流行っていた。
でも最近あまり見ない。深浦九段も「懐かしいですね」と。
そして今回の藤井は▲45歩を用意していた。
羽生は端歩を受けてから△22銀と上がる。
後手は銀冠にする狙いだと思っていたが、どうも様子がおかしい。
結果的に変な陣形に落ち着いた。△25歩なんていかにも俺がやりそうな手。
先手優勢っぽい雰囲気で進んで、ソフトの評価値が変わったのが59手目▲55歩。
いや色々思ったけど、やはり藤井システムが見られたのは嬉しかったのだよ。
自分の予想以上にソワソワ、ワクワクしていた。
しかしこの辺りから解説の空気も変わり、少なくとも先手優勢ではなくなっていた。
ということは、勝ち負けの結果は大体予想がつく。
ありえないほど気分が沈んだ。
終わってみれば、いかにも羽生らしい勝ち方。
居飛車が悪かったのか、それとも元々悪くなんてなかったのかはわからないが、
△25歩や△12香をきっちり生かして憎らしいほど最善手を続けてくる。
この序盤センスは、藤井の序盤力ともまた違った羽生の強さだ。
Twitter解説の増田六段は、冷徹なコメントで、自分の好みだった。
後手番を落としただけなんだけどねぇ。
2日目の千日手成立から先手藤井システムで負けてるので、大量に負けた気分。