王位戦七番勝負第2局2日目

封じ手は予想通りの▲92歩。
羽生は1時間の長考で△95歩。△同香ではなかった。苦しさが窺える。
とはいえ、観戦中はそんな羽生が苦しいとか思っても絶対口に出ない。
羽生の強さは、これまでに嫌というほど見てきた。本当に強い。
難しいのは間違いないから、2人とも苦しんでるし楽しんでるはず。
コンピュータの見解は、先手よしで安定している。
でも、この戦型でアテにならないのはわかってる。
羽生や藤井が一体何手先の展開まで見ているか。コンピュータの読みは浅すぎる。
切れるか切れないかという繊細な判断も難しいところ。
成算のない展開を羽生が選ぶわけがない。何があるかわからない。恐怖。
△33銀。忙しいと言われていた局面で、これ。この手も怖かった。
壁を解消して、これ自体は非常に大きい手。▲44桂の筋も消している。
適時角交換で後手に△22銀の壁形を強いたのは、先手の大きな主張だった。
先手は桂得できそうなので、普通なら喜んで振り飛車を持ちたいところだ。
だけど、本当にそうなのかは自分程度の棋力ではわからない。
羽生が△52金右や△33銀を指したということは、攻めを呼び込んで受けきれるとか、
攻め合いの順があるとか、何かあってもおかしくない。
将棋はわずかな配置の違いで大局観が通用しないような局面がいくらでもある。
うちらが昼寝していても、局面は進んでいく。恐ろしい。
おおむね控え室の検討通り。GPS将棋の手もよく当たる。特に藤井側の手。
これはミスらなきゃほんとに先手勝ちなんじゃないの?
終盤に必要なだけの持ち時間が残っているのも大きい。
藤井のタイトル3期はすべて2日制の竜王戦。2日制は合っているのだ。
2ちゃんねるを見ていても、じりじりと空気が変わっていくのが怖かった。
「羽生に勝つの6年ぶりなのか」みたいな勝つ前提のレスまで付く始末。
そんな中でも、本局の藤井は崩れない。踏み込んだ手をしっかり指している。
最も恐怖したのは、端。△15歩。
端はやばい。寄せに直結するし、間違えやすい。
ここは取り込ませて▲18歩と謝る。△17角(!)も耐えているとのこと。
そして、いよいよ!99手目▲52と。
△89飛成は詰めろではない。▲52とで手勝ちである。そう主張している手だ。
解説の糸谷が「明確に先手一手勝ちです。」と言っている。
この糸谷をあんなに疑ったのも、この対戦だからだよなあ。
いよいよ、コンピュータが先手の勝ちを読み切った。
あとは、棋譜中継のミス(誤った表示はたまにある)を疑いながら、待つだけ。
そして棋譜コメントに投了の文字が!あ!
ここで落ち着いて、連続静止画を見る。画像に記者が映っている!!
対局が終わったことを確信することで、藤井勝ちを確信した。
2012年7月24日〜7月25日 七番勝負 第2局 羽生善治王位 対 藤井猛九段|第53期王位戦
自分が将棋を始めたのは6年前で、羽生藤井戦自体ほとんど見る機会がなかった。
藤井の勝率が4割は当たり前という感覚。
それが、2010年になり、物心ついて初めての羽生藤井戦を見ることができた。
あのときは、対戦を見られただけで嬉しかった…わけではなかったようだ。

3年以上ぶりの勝利を想像して、胸の奥の小さいけどギラギラ輝く希望が我慢できなかった。
ああ、その灯は消えてしまった。消えてしまった。

http://d.hatena.ne.jp/merom686/20100714

ここまで思っていたとはw
でもまあ、そりゃそうだよね。勝つ可能性があるんだから期待するよ。
だけど、その2ヶ月後からの王座戦はえらいテンションの下がりよう。
何かを思い知ったらしい。
王座戦五番勝負第1局 - merom686の日記
王座戦終了 - merom686の日記
2010年7月14日 第23期竜王戦決勝トーナメント
将棋王座戦中継サイト(これまでの王座戦)
羽生善治名人対藤井猛九段|第52期王位戦挑戦者決定戦
でも、今日の勝利は、そこまで意外ではなかった。
最近の藤井将棋には躍動感があった(露骨に藤井システムによるイメージだけど)。
2年前王座に挑戦したときより、「藤井の強さ」に太さがあった。
現実に、勝てる可能性があると思えた。
それでも、実際に勝つまでには、コインが連続3回表になる必要があると思っていた。
各コインは1/2の確率で表になるので、その意味で普通に起こりうる。
しかし勝つまでの道のりは果てしなく長い。
棋譜コメントにもあったが、「呪縛」。
誰だって「俺はもう二度と勝てないんじゃないか」と思ったことがあるだろう。
しかし、その呪いは今日断ち切った!
王位戦は、改めて五番勝負になった。本当の戦いが、これから始まる。