第2回将棋電王戦第2局

前回はある意味想定内の将棋だった。言われてみればそういうこともあるよねと思えた。しかし今回の拮抗した中終盤は予想外のことで、勝敗とは別に、この将棋が見られて嬉しいと思って観戦していた。

終局後

ニコ生やTwitterの空気が思ったより暗かった。喜びのツイートを思いとどまったくらい暗かった(笑)。プロ棋士の思いは、確かに自分には想像できない。プロ棋士の棋力だけで言っても、普通の人間の想像が及ぶものではない。
会見がすごく面白かった(まだ途中までしか見てないけど)。特に、来週対局する船江五段が、自分も今日のような将棋が指したいと言っていたのが素晴らしいと思った。

中終盤

ニコ生ではボンクラーズの評価値が表示されている。その数字が、ほとんど動かない!コンピュータの力が出る展開なのに、佐藤四段は互角以上の力で押し返している。コンピュータと人間が拮抗した戦いをしているというのが信じられない。
現在のコンピュータ将棋には弱点がある。アマチュア相手なら、圧倒的な力で弱点をカバーできる(これはGPS将棋のイベントで確認できたと思う)。それがプロ相手だとどうなのか、それがわからなかった。棋力が一定以上高い領域になると、弱点があるのは致命的になる。その水準が、プロ棋士の強さと比べてどうなのかを知りたかった。
先週の将棋を見て、プロが指せばコンピュータの弱点が露呈するような作戦は予想より遥かに多いと思った。そして今日の対局では、プロ棋士の前では複雑な中終盤でも弱点が少しずつ出てくるように思えた。構想力や手数計算に大きな弱点があることは知っていたけど、これは完全に予想外。見ていた印象だけで言うと、コンピュータが得意そうな展開でも「やっと互角」だった。

大きなトラブルはなかった

Ponanzaは、開発者の自宅にある2台とクラウドの8台、合計10台のPCを使い、1秒に3000万〜4500万局面を読む。自宅と会場の間をリモートデスクトップでつないでいたが、それが切れることがあったとのこと。思考部分は順調だったみたいで本当によかった。Twitterで、対局寸前までデバッグしている様子だったからずっと心配だった。

序盤

佐藤四段が和服で現れて、気合いを感じた(将棋が進むにつれてもっともっと気迫を感じるようになるのだけど)。Ponanzaはアマチュアが見ても変な序盤。向かい飛車っぽい雰囲気から居飛車にして飛車先を切らせる。これは、致命的ではないけどかなり損をしたと思っていた。しかし、駒組みが終わったころには解説の野月七段が互角と言っていたので、やはり将棋は簡単じゃないのだなあと。
Ponanzaは定跡を使っていなかったと聞いてびっくり。なるほどそれもPonanzaらしいねぇ。結果としてPonanzaが力を出せる将棋になった。

感想

どちらかは負けになるという事実を拒みたくなるけど、引き分けは嫌だ。そう思うくらいの熱戦だったし、これぞ将棋という内容だった。どちらも勝ちにしたいとは少し思った。今回の佐藤四段が負けなら、「負け」とは一体何なのか、わからなくなった。
「コンピュータ側がすぐ負ける展開になるのではないか」と心配する場面が多かった。先週からプロ棋士の強さをひしひしと感じているので。プロ棋士が強いのはわかりきっているから、正確には「今のコンピュータ将棋は思ったほど強くなかった」ということだけど。
自分は、勝敗の意味ではPonanzaを応援していたけど、といって佐藤四段にもミスなく120%の力を発揮してほしいし、複雑な気持ちだった。それでも、ボンクラーズの示す評価値が大きく先手Ponanzaに振れたときは嬉しかった。

ボンクラーズの評価値

ボンクラーズの出す数字があてにならないことは先週の将棋で知れ渡ってしまった。早い段階で多くの人が認識できてよかった。ただ、どういう種類の局面かを知る上ではかなり参考になると思う。今回は、ほとんど横ばいの数字の並びに、両者の力がぶつかっている迫力を感じた。