2日でチェスの勉強

水曜日の将棋電王戦FINAL記者発表会を見て、金曜日までにチェスの棋力を可能な限り上げることを強いられた。

ルールは大体わかっているが、指した経験は数えるほどで、棋力はゼロ。何も見えない。こんな状態でオープニングや手筋を勉強しようとしても、面白くないし吸収する力(≒棋力)もない。

まず、チェスクエスト(人がいないのでほぼbotと当たる)で10連敗した。3分切れ負けなので、考えすぎることがない。下手の考え休むに似たり。ここで勝てるとは思っていない。経験値を得ることが目的だ。失敗を恐れずに「わからなければ取る」「強気に攻める/受ける」を心がけた。

同じ場所で負け続けると飽きてくるので、次にWindows付属のChess Titansを(Twitterで見た)。デフォルトでレベル2だったので、もちろんレベル1に下げる。まだ駒認識ができてないので2Dモードにした。これは弱い。簡単に駒得させてくれる。しかし引き分け。優勢になっても、チェスはこれがあるんだ。

操作性がいまいち合わなかったので、ここでGoogle検索。チェス入門βを発見。これは以前から知っていて、このときもあんなサイトあったなとぼんやり思っていた。そうかここだったのか。ここもレベル1は弱く、いきなり勝つことができた。もう、真っ暗闇ではない。ある程度は見えるようになってきている。

無敗でレベル4に辿り着くも、そこで5敗。レベル5と6でも負け続けたが、常に実験的な序盤を心がけた。まあ、だんだんキングの先のポーンを2つ進めるのに落ち着いてしまったけど。コンピュータはワンパターンなところがあるので、ここでばかり何十局も指すのはよくない。

レベル6に一発入れたところで、チェス入門を読む。このサイトは素晴らしい。説明が初心者にもわかりやすいし、キャスリングなどを画面上の盤で動かして覚えることができる。練習問題も、今までの経験(1日程度だけど)があるので、経験が生きて簡単に解ければ嬉しいし、難しくても「その筋は知ってたけどそう使うのかあ」などと楽しむことができる。

木曜の夜にはチェスクエストで1戦1勝。時間のない中でチェックメイトに討ち取ったのが嬉しかった。まだbotより弱いはずだが、感覚で指した手が悪くなかったというのが自信になった。

そして金曜日。素晴らしいイベントで、解説も面白かった。チェスの力がついたことで、その面白い解説をより楽しむことができ、とても嬉しかった。

ところで、チェスの力がついたと言っても、力と言えるような力はない。野球で例えれば、ハイハイをしてつかまり立ちをして、ようやくゆっくり歩けるようになったところだ。バットを振る力は将棋で鍛えてあるので、これでとりあえずチェスを指すことができる。

オープニングの勉強をするのは、もう少し強くなってからにしようと思う(すぐに強くなる予定はないけども)。チェスは序盤の自由度が低いとはいえ、まだ「何を指しても一局」なはずだ。何より今の棋力では理解できないと思う。もちろん同じ筋でやられるようなら修正する。

たった2日でミジンコレベルから人間レベルになれた(一般のチェスプレイヤーは超人レベル)。これは将棋をやっていたからだろう。pinとか同じ色のビショップとか、知ってる概念が今にして思えば色々応用できた(ルークが成れないだけで感覚崩壊するなどつらい部分も多かった)。

勉強法については、それこそ将棋と同じでいい。今年に入ってから、将棋クエストで短時間の将棋を集中的に指し、気になるところをコンピュータや本で確認というスタイルで上手く行っているので、それを真似た。自分は将棋が好きだが、その好きは才能と言えるほどの好きではない。プロ棋士で、研究家で実戦は公式戦だけという人もいるが、そんな芸当が自分にできるわけがないという現状認識が第一歩だ。

やりたくない勉強はしない。実戦を指せば何かしら気になる部分が出るので、そこで勉強できる。経験値が(自分が思ってる以上に)足りないので、早指しで対局数をこなす。将棋を始めたときも、短期間でとにかく実戦(強くなったら感想戦も)だった。

基礎は本などで勉強しないと変な癖が付くのではないか、という心配は見当外れだと思う。この1年で自分は将棋が少しだけ強くなったと思うが、その過程の一定割合を占める作業は、本や解説を暗記して付いた変な癖を壊していくことだった。もちろん暗記じゃなくて理解をしようとしていたが、プロレベルとかアマ初段レベルとかの手順はアマ3級が理解できなくて当然だ。つまり、ある程度の癖は仕方ないということ。

本を読むための「目」がないことを自覚することの価値は高い。自覚し、その目を得るための手段は、自分の場合は早指しの実戦だった。