観戦していて自分でも不思議だった。完全にコンピュータ側を応援している。勝ってほしいと思っている。結果を求められていた第2回電王戦のときと違って、いい将棋が見られれば勝敗はどちらでもいいと口では言っていたはずなのに。コンピュータが勝つときのほうが、電王戦ならではの面白い内容の将棋になりやすいという傾向はあるにせよ。
コンピュータ将棋には強くなってもらいたいと思っている。単にそれが理由かなあ。コンピュータ将棋の苦手な局面での脆さはある程度実感しているので、その弱さが出ると現実を見せつけられているようで嫌なのだ。
ただ、そのコンピュータ将棋に勝つのは非常にしんどいというのも事実。斎藤五段が強かった。強いということは聞いて知っていたが、こんなに強いとは知らなかった。電王戦は、棋士について深く知る絶好の機会だ。
今のコンピュータ将棋が苦手とする展開のサンプルが得られたのはよかった(そういう将棋は他にもあると思うが、電王戦は詳しい解説が付く)。電王戦がある日は開発できないけど、開発にマイナス面ばかりというわけではない。もっとも、すぐに役立たせることができるわけではないけど。
戦型は後手四間飛車で喜んだけど、Aperyの力が発揮されない展開で残念だった。プロ棋士のすごさはタイトル戦やNHK杯でいつも感じているので、年に一度の機会だし強いAperyを見たかった。必要以上に開発者の平岡さんに感情移入してしまい、とてもつらかった。ただ、負けたほうが弱く見えるのは仕方ない。電王戦は対戦者の片方がこういう思いをするイベントだということだ。観戦者にとっては5対5でも、自分の対局は一局のみ。厳しい。
最も残念だったのは、鈴木八段の発言。鈴木八段の解説が好きで、電王戦での解説を楽しみにしていただけに、ガッカリした。ずっと今の将棋界にいて、平岡さんのブログを読んでいないなら、そういう感情を持ってしまうことは理解できる。しかし、それをそのまま口に出すことで、将棋になじみの薄い人たちに嫌悪感を持たせることになった。電王戦は、そういう人たちに将棋の面白さを伝える機会でもあったはずなのに。
木村八段がその辺りを最後にやんわりとフォローしてくれた。救いになった。嬉しかった。解説が上手いだけでなく、尊敬できる素晴らしい棋士だと思った。
(追記)
先崎九段の観戦記がとてもよい。素晴らしい。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1499999