NHK杯、三浦・杉本

後手の杉本は角交換四間飛車。それに対して三浦は▲86歩!ここから銀冠は間に合わないとしたものだが、また面白いことをしてくれる。△44歩に(▲56歩を入れず)▲58金もなかなか。後手に4筋の交換を許すと言っている。杉本はすぐ交換するが、そのタイミングで▲85歩!
ここから、▲84歩△同歩▲95歩△同歩▲92歩△同香▲65角(両取り)の狙いがある。杉本はジッと△62金。相金無双っぽくなってきた。そして、端を取り込ませた。
鈴木大介の解説が、歯切れがよくて楽しい。ギアチェンジ(駒得したらゆっくりに)、時間稼ぎ、などの言葉遣いもよい。早見えで不真面目系、自虐が面白い。
さて、後手は△75歩として△76歩を見せる。ここで▲94歩。仮に△同香なら▲同香△93歩で、後手に△94歩と△76歩の2つの狙いがある状態となるが、一度に両方はできない。その間に先手は▲21歩成から桂得して攻めてしまおうという狙い。なので▲94歩を取らずに△76歩と取り込む。ひー。
三浦、玉をひたすら逃げてから、後手の狭い飛車をいじめる。▲91飛が、ものっそきつい。杉本もギリギリで玉の逃げ道を作り、入玉模様に。先手を歩切れにさせる△97歩▲99歩の交換が、ここに来て後手入玉の邪魔になるとか、これだから将棋は面白い。後手としては、玉が寄せられてしまったら負け。何とかして入玉したら、今度は先手玉を寄せれば勝ち。それができなくても、相手の点数を24点未満に削れば入玉で勝ち。
しかし、杉本はかなり早い段階で30秒将棋となっており、ミスっぽい何かがけっこう出ている。点数では勝てなくなり、先手玉に寄せもない、それどころか後手玉も危険。気がつけば大差で先手の勝ちになっていた。いかにも杉本らしい、いい将棋だったので、結果は残念だったけど。でもいい将棋だった。
入玉の話もいっぱい聞けたが、やはりプロのルールは合意なのね。持将棋を提案して断られたことがあって「あれは震え上がりましたね」と言っていた。「入玉将棋のときは駒台が一番安全」というのも面白い。大駒も、打たなければ絶対に取られない。
(追記)
書き忘れてた。「先手が若干可能性を減らした」というのが、自分が好きな類の話。実戦は▲21歩成△65歩▲92香成だったのだが、これがやや変調を感じさせる手順とのこと。これは▲92香成△65歩▲21歩成としたのと同一局面で、▲92香成△65歩の局面では▲21歩成だけでなく▲82成香なども選べる。つまり、これが予定であれば▲92香成を先にしたほうが手広い意味があった。結果としては、▲92香成△65歩から▲21歩成を選んだ、違和感のない手順と同じ局面なので、それが悪いということは全くないが、手順から得られる情報があるということ。