電王戦リベンジマッチ

全く同じ条件での再戦。事前に本番バージョンが貸し出されている点では第3回電王戦と同じだが、開発者がそのつもりで用意していないというのが決定的に違う。1回限りの作戦だった△74歩なのに、そのままリベンジマッチに投入させるのは酷い。
楽しみにしていた。しかし、始まってみたら、おそろしくつまらない。事前に予想できたはずの展開なのに、楽しさが吹っ飛んだ。△75歩の仕掛けまでは前回と全く同じ。そこから別の派手な手をツツカナが指して、ようやく「視聴者には」未知の局面へ。
自分や解説の鈴木八段は見たことがない局面だが、船江五段にとってはよく知っている局面なのではないか。そう思ったら、どうしようもなくつまらなくなった。解説は面白いし、将棋の展開も気になるので、ニコ生自体は見続けていた。
だんだん、ツツカナの評価値が下がってくる。これは、ツツカナが勝ちにくい展開だと思った。単なる駒損ではなく、攻めが切れて玉を逃している感じの、紛れにくい劣勢だ。それでも、簡単ではないらしかったが、船江五段が強く、時間をたっぷり使ってあっさりと勝ち切った。
印象に残った指し手は、ツツカナの△89と。ソッポの桂を取る手。何かと思ったら、次に△99と(香取り)から、△24香と歩切れを突く狙いがあった。相手玉に寄せたいと金を逆方向へ動かすので見えにくい。船江五段は、歩切れを重視することを(当然ながら)知っていて、この手を予想していた。ひょっとしたら「と金を玉と反対方向へ行かせた」のかもしれない。
そこそこ楽しんだけど、結果は不満だし(これは個人的なことだが)、ものすごく悪い印象が残った。今回つまらなかっただけなら、まだいい。第3回電王戦にも、「事前に同じ条件で練習できるから、今回と同じでつまらないんだろうなあ」という印象が付いてしまった(実際は、開発者が今回は対策を入れている)。これは自分にとって大打撃だ。ニコ生のアンケートで、将棋関係では初めて4(あまり良くなかった)をクリックした。
(追記)
船江五段とツツカナでは、読みの深いところで詰みを認識する力が全然違う。今回はツツカナが危険を認識できず、評価値が大きく動いていた。前回も、慌てて詰みを回避したツツカナが、大きく駒損した。やはり、コンピュータ将棋で一番不安なのは終盤力だ。新しいバージョンのツツカナではどうだろうか。
同じ条件で対局しても、コンピュータは手を変えることがある。定跡の乱数、思考時間のわずかな差、マルチスレッドでのタイミング、このくらいだと思っていた。今回初めて知ったのが、相手の思考時間によって予測読みの時間が変わるという点。これは大きい。自分がコンピュータと指すときは先読みさせないので、ずっと気づかなかった。